研究課題
本研究は、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARBs)服用患者における血清中エポキシエイコサトリエン酸類(EETs)濃度と、ARBsの有害作用として報告されている心血管系イベント発症との関連性について評価することを目的としている。平成28年度は、平成26年度に確立したLC-MS/MSによるヒト血清中EETsおよびその代謝物であるジヒドロキシエイコサトリエン酸類(DHETs)の同時測定法を用いて、引き続き患者サンプルを測定した。本年3月末日におけるサンプル数は、ARBs服用患者108名、非服用患者120名である。第37回日本臨床薬理学会学術総会において、血清中エイコサノイド類濃度(EETsとDHETs濃度の総和)への薬物の影響について報告した。ARBs服用患者(92名)における血清中エイコサノイド類濃度の中央値は1.5 nMであり、非服用患者(99名、1.9 nM)より低値であったが有意差は認められなかった(p=0.15)。しかし、ARBsとスタチン薬の併用群(55名)では、スタチン薬非併用群(37名)に対し血清中エイコサノイド類濃度に低下傾向が見られた(p=0.07)。すでに平成27年度には、高血圧患者において血清中エイコサノイド類濃度が有意に低下していることを明らかにしている。ARBsやスタチン薬の多くはCYP2C9、CYP2C8などのCYP酵素阻害作用を有する。したがってこれらの結果は、血清中エイコサノイド類濃度の低下が心血管系に何らかの影響を及ぼす可能性、およびARBsなどCYP阻害作用を有する薬物の複数使用がその影響を強める可能性を示している。血清中エイコサノイド類濃度に対する影響因子について多変量解析を行った結果、ARBs服用および腎機能が選択された。この結果について第15回IATDMCT(京都)で報告する。また、ここまでの結果を論文としてまとめる。
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