研究課題/領域番号 |
26460231
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研究機関 | 東北薬科大学 |
研究代表者 |
蓬田 伸 東北薬科大学, 薬学部, 講師 (80230845)
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研究分担者 |
染谷 明正 順天堂大学, 医学部, 准教授 (90167479)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | がん細胞 / 薬剤耐性 / P-糖タンパク質 / ADPリボシル化因子 / DNAマイクロアレイ |
研究実績の概要 |
ヒト由来骨髄性白血病細胞株であるK562細胞に抗がん剤であるDoxorubicin(DOX)を処置することで耐性細胞を作成したところ、薬物を処置する期間や濃度とは関係なく、P-糖タンパク質の発現は起きているという現象を見つけた。そこで、この現象を誘発する因子を同定するため、P-糖タンパク質の発現量や期間に差があるK562細胞から、TOTALRNAを抽出し、セルイノベーターにDNAマイクロアレイ解析を依頼した。その結果、3種類の細胞で3000以上の遺伝子に発現の差が見られ、現在も解析中である。その中で、P-糖タンパク質の発現量が多い細胞においてADPリボシル化因子に関係する遺伝子の発現が増加していた。そこで、ARF1とARF6の発現とこのタンパク質の活性化に関わるARF-GEP100をウエスタンブロットで解析したところ、P-糖タンパク質の発現量が多いときには、ARF6とARF-GEP100の発現の増加が見られ、P-糖タンパク質の発現量が少ないとARF6とARF-GEP100の発現に変化は認められなかった。一方、ARF1の発現量に関しては、ARF6やARF-GEP100と違いP-糖タンパク質の発現量が多い細胞では変化が見られず、P-糖タンパク質の発現量が少ない細胞では、若干増加する傾向が見られた。このことから、ARF6やARF-GEP100がP-糖タンパク質の発現の安定化に関わっている可能性があるため、現在、ベクターを作成し、これらタンパク質をノックダウンさせ、P-糖タンパク質の発現量の変化や耐性への影響を検討中である。また、乳がん細胞株であるMCF-7や大腸がん細胞株であるHT-29を用いて耐性細胞を作成中で、同様の解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
DNAマイクロアレイの解析には、時間が必要だと思っていたが、思いのほか時間を要していること。そして、候補となる遺伝子をなかなか絞り込めないのが現状である。実績にも記載したが、ARF-GEP100については、タンパク質レベルでは増加が認められているが、DNAマイクロアレイの解析では該当する遺伝子として上がってこなかったなど、P-糖タンパク質の発現の速さや量を規定する因子の同定が思いのほか進んでいない。さらに、iTRAQ標識試薬を用いたプロテオーム解析が行えなかった。
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今後の研究の推進方策 |
P-糖タンパク質の発現量や期間がことなる細胞について、iTRAQ標識試薬を用いたプロテオーム解析を行う。さらに、DNAマイクロアレイ解析やプロテオーム解析で得たデータから、P-糖タンパク質の発現量や速さに関わるターゲット因子を絞り込む。そして、ターゲット因子を耐性の獲得していないK562細胞やNalm-6細胞、さらには、乳癌細胞などのがん細胞にその遺伝子を過剰発現させ、P-糖タンパク質の発現に、どのような影響を与えるかをWestern blottingで解析を行う。さらに、ターゲット因子に対するsiRNAを作成し、耐性細胞における因子のメカニズムを検討する。また、ターゲット因子に対するペプチド抗体を作成する。そして、その抗体を用いて、種々の耐性細胞の細胞可溶性画分を作成し、免疫沈降を行い関連するタンパク質を同定する。そして、耐性細胞におけるターゲット因子の局在が、P-糖タンパク質の発現の違いでどのように変化するかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
iTRAQ標識試薬によるプロテオーム解析を行えなかったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、iTRAQ標識試薬によるプロテオーム解析を行うため、現在準備中である。さらに、ターゲット因子となる抗体を購入し、耐性細胞における因子のWestern blottingの解析を行う。
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