研究課題/領域番号 |
26460236
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研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
赤沢 学 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (80565135)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 長期処方 / 患者登録 / 地域薬局 / 残薬対策 / 薬剤師介入 |
研究実績の概要 |
医師や薬剤師の関与がないまま長期の薬物治療を継続している患者が増加している。地域薬局で慢性疾患を持つ患者登録を行い、定期的なフォローを行うことで、残薬対策や長期処方に関連する問題の早期発見、対策につながるかを検討した。 平成26年度は、地域薬局14店舗の協力を得てパイロット研究を行った。慢性疾患の治療のため36日以上の長期処方を受けている患者を選択し、オンライン(DropBox利用)による患者登録を行った。登録内容は、病状、治療内容、検査値、服薬状況に影響を与えると考えられる生活環境など患者から聞き取った情報とした。その後、少なくとも1ヶ月間に1度は電話等によって患者に連絡を行い、服薬や症状変化に関する確認を行った。 その結果、登録期間4ヶ月間で37例の慢性疾患患者を登録した。その内訳は、平均年齢72歳、男性6割であった。患者登録開始から1年以上が経過した平成27年1月末時点で28例がフォロー継続中であった(継続率76%)。追跡中止となった9例は、その理由を確認しており、患者の引っ越しや転院、薬剤師の移動などが主な理由であった。薬剤師の介入効果としては、服薬状況に問題のあった12例の患者の内、薬剤師によるアドバイス等で7例の改善例が確認された。また、患者の不安軽減(10例)や症状変化の気づき(17例)などの事例もあった。更に、患者の訴えから狭心症の発見と受診勧奨による治療開始に至った患者もいた。 パイロット研究の結果、患者登録と追跡調査は、長期処方に関連する問題の解決策になり得ることが明らかとなった。この成果を基に、平成27年度は参加薬局数(最大100店舗)並びに登録患者数(目標症例300例)を増やした本調査に移行する。新規の患者登録システムを開発導入し、薬剤師の負担を軽減しつつ、薬剤師による介入効果を定量的に評価して行く予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度(初年度)は、パイロット研究に参加した薬局薬剤師への情報提供等を目的として、毎月末にニュースレターの発行(全部で15回発行)並びに中間報告会(5月と10月の2回)を開催した。また、1年間の追跡調査結果をまとめて、最終報告会(3月)を実施した。更に、学会報告やマスコミ取材を通じて研究成果の公開などにもつとめた。 その成果もあって、保険薬局経営者連合会並びに日本アプライド・セラピューティクス学会保険薬局委員会に所属する薬局薬剤師を中心としたパイロット研究(14薬局参加)から、本調査(最大100薬局参加)への移行が予定通りに進んでいる。 また、パイロット研究の経験を生かして、患者登録・追跡調査の入力システムの開発も進めている。患者登録理由を明確にすることで、薬剤師介入の成果を定量的に評価することが可能になる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度(2年目)は本調査を開始する。5月時点で60薬局を超える薬局からの参加登録もあり、地域的にも北海道~鹿児島まで全国的な広がりを見せている。また、全ての参加薬局薬剤師を対象にしたキックオフミーティングを開催し、研究倫理や入力システム等の説明を行うと共に、新規の患者登録をスタートさせる。登録期間は5月末~9月末の4ヶ月間を予定しており、この期間中に、長期処方を受けている慢性疾患患者の内、服薬状況や症状不安を感じるなど治療上何らかの問題・懸念があり、薬剤師による関与が必要と思われる患者選んで登録してもらう(目標登録数300名)。その後、最低月に1回は電話や訪問等の手段で追跡調査を実施してもらい、1年後の追跡調査結果をまとめ、中間解析結果をまとめた報告会の開催を最終年度末に予定している。なお、その後は最長10年間を目標にフォローアップ調査が出来るよう準備も進めている。 システムを通じて入力された患者データは、明治薬科大学で進捗状況の管理並びにその成果をまとめたニュースレターの発行を継続的に行う予定である。更に、研究成果を公表するためホームページの開設も準備している。そのため研究協力者として学部学生、大学院生並びに外部協力者を採用して4~5名体制で研究支援を行う予定である。 また、参加薬局を通じて、長期処方を受けている患者の服薬実態把握や生活リズムと服薬状況の関係に関するアンケート調査を実施する。これは帝京大学大学院公衆衛生研究科との共同研究として準備を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に予定していたデータ入力システムの開発は、学内予算を有効に活用したため経費出費を抑えることが出来た。次年度以降は入力システムの改善等、運営上必要な経費出費を予定している。 また、参加薬局の薬剤師には研究費の分配は行っていないが、遠方の参加薬局も増えたことから、班会議にかかる経費(会場費や飲食代)並びに参加した薬剤師へは旅費・謝金等の支給を予定している(会社等から出る場合は除く)。その他、薬剤師による研究成果の積極的発表を支援するために、学会等で発表した薬剤師には学会発表にかかる経費(旅費、登録料など)を支給する予定。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費は、データシステムの使用に関するマニュアル並びにアンケート実施にかかる準備費用として使用する。参加薬局の大幅な増加に伴い出費額の大幅な増加が予想される。旅費は、班会議参加並びに学会は発表を行った薬剤師への支給並びに遠方の参加薬局への説明会実施のために使用する。人件費並びに謝金は、大学で行うプロジェクト進捗管理並びに入力データ確認・解析等を実施する人員として学生、大学院生、研究協力者への支払いに使う。延べ人数として4~5名を考えている。その他、データ入力システムの保持、改善費用、研究成果発表用のホームページ開設、内外での学会報告、論文発表にかかる経費として使う予定。
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