研究課題/領域番号 |
26460238
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研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
松井 勝彦 明治薬科大学, 薬学部, 准教授 (20257140)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アトピー性皮膚炎 / 黄色ブドウ球菌 / ランゲルハンス細胞 / Th1細胞分化 / Th2細胞分化 / ジョサマイシン / ドキシサイクリン |
研究実績の概要 |
本研究は、ランゲルハンス細胞 Langerhans cell (LC)をターゲットにしたTh2細胞分化阻害と黄色ブドウ球菌の除去を同時に行える薬物を既存の抗生物質の中から探索し、アトピー性皮膚炎 atopic dermatitis (AD)治療の臨床応用への可能性を探るものである。 マクロライド系抗生物質(7種)の中では、ジョサマイシンとスピラマイシンがLCのT-cell immunoglobulin and mucin domain-containing protein (TIM)-4発現の抑制によりTh2細胞分化を阻害することを確認した。また両薬剤は、LCのCD86発現の抑制によるTh1細胞分化阻害能も有していた。しかし、AD患者の病変部から分離された黄色ブドウ球菌株は、スピラマイシンよりもジョサマイシンに対して強い感受性を示した。 テトラサイクリン系抗生物質(5種)もTIM-4発現の抑制によるTh2細胞分化阻害を誘導したが、Th1細胞分化阻害能は有していなかった。患者由来の黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性は、ドキシサイクリンが最も優れており、ジョサマイシンのそれに匹敵していた。 ニューキノロン系抗生物質(9種)は、ノルフロキサシンのみがTh2細胞分化阻害能を有しており、LCにおけるTIM-4発現の抑制も伴っていた。また、CD40発現の抑制によるTh1細胞分化阻害能も有していた。しかし、患者由来の黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性は、ジョサマイシンに劣っていた。 以上の結果に基づき、AD治療のための第一候補薬物としてジョサマイシンを選択し、NC/NgaマウスのAD様皮膚病変部に対する治療効果を検討した。その結果、ジョサマイシンはベタメタゾンと同等の治療効果を発揮し、その効果は局所リンパ節におけるTh1/Th2細胞分化阻害とIgE産生の抑制を伴っていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Th1/Th2細胞分化阻害の機構の解明を終了し、特にTh2細胞分化阻害に関しては、LCのTIM-4発現抑制が良い予測マーカーになることを見出した。また、AD患者由来の黄色ブドウ球菌に対する各抗生物質の抗菌活性測定もすべて終了した。さらに、AD治療のための第一候補薬物としてジョサマイシンを選択し、ベタメタゾンと同等の治療効果を有することを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
LCをターゲットにしたTh2細胞分化阻害と黄色ブドウ球菌の除去を同時に行える薬物の第一候補としてのジョサマイシンに続き、第二候補のドキシサイクリンの治療効果を検討する予定である。 ドキシサイクリンは、AD患者由来の黄色ブドウ球菌に対してジョサマイシンと同等の抗菌活性を有していたが、Th1細胞分化阻害能を有していなかった。そこで、ドキシサイクリンの治療効果をTh1細胞分化とTh2細胞分化の両方を阻害するジョサマイシンのそれと比較することで、AD 治療においてTh1細胞分化を阻害することの意義を明らかにしていく予定である。
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