研究課題
幼児・学童期において問題視されている,いじめ、心理社会的ストレスを想定した社会的敗北ストレスを幼若期マウスに負荷し,モデル動物を作製した。作製したモデル動物を用いて,幼児・学童期における心理社会的ストレスによる発達障害や気分障害などの精神障害が,青年・成人期まで遷延する機序を検討した。幼若期社会的敗北ストレスを1日負荷したマウスに認められる前頭前皮質におけるセロトニントランスポーター(SERT)の総タンパク質の発現量の増加は,セロトニン含量を減少させ,セロトニン作動性神経系の機能を低下させることを見出した.したがって,幼若期マウスの心理社会的ストレス負荷に対する脆弱性には,セロトニン作動性神経系の機能低下が関与していることを明らかにした.SERT阻害薬は若年期の社会性行動障害に対して効果が認められなかったが,非競合的N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体拮抗薬は改善作用を示した.しかし,社会性行動障害を示したマウスの前頭前皮質において,NMDA受容体サブユニットのNR2Aタンパク質の発現には変化は認められず,NR2A遺伝子欠損マウスに幼若期社会的敗北ストレスを負荷しても社会性行動障害が認められた.したがって,非競合的NMDA受容体拮抗薬の緩解作用や社会性行動障害の発現におけるグルタミン酸作動性神経系,特にNMDA受容体との関連性は明確にできなかった.一方,幼若期社会的敗北ストレス負荷マウスの前頭前皮質および血液の網羅的な遺伝子発解析では,中枢神経機能障害,モノアミンやグルタミン酸作動性神経系,およびエピジェネティック制御機構に関わる遺伝子の発現の変化が認められた.したがって,心理社会的ストレスによる社会性行動障害の発現には,これらの遺伝子の発現変化が関与している可能性が示唆された.
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