広範囲な眼抗菌療法の確立及び使用時の煩雑性改善を可能とする「ナノ結晶を用いた貼付型眼瞼透過性製剤“貼る目薬”」の開発を目指すべく、平成28年度は薬物ナノ結晶を含む貼付型眼瞼透過性製剤の涙液中薬物挙動の測定法確立について検討した。
薬物ナノ結晶含有製剤の涙液中薬物動態を解明する: ナノ結晶製剤の涙液中薬物挙動を解明するため、微小透析プローブによる涙液の採取と10 nLの試料で測定可能なナノHPLCによる薬物濃度測定を行った(本研究では比較的解析が容易なトラニラストをモデル薬物として選択した)。その結果、微小透析プローブを用いることで、非侵襲的かつ経時的に涙液の採取が可能となった。また、得られた試料は1μL程度であったが、ナノポンプとナノHPLCを用いることで希釈することなしに涙液中の薬物濃度変化の測定が可能であった。本測定システムを用い、家兎眼瞼への貼付型眼瞼透過性製剤適用後の薬物濃度変化を検討したところ、貼付後10分後から涙液中で薬物が検出され、貼付後25分~3時間まで、涙液中の薬物濃度は一定(プラトー)であった。一方、0.75%トラニラスト製剤を貼付した際のプラトー時の涙液中薬物濃度は、0.00007%と投与量の1/10000倍であった。
以上、平成27年度に明らかとした結果と合わせ、ナノ結晶含有ゲルパッチは、眼瞼表面から侵入した薬物が、マイボーム腺に移行し、マイバムとして眼表面に排出される。この際、貼付後25分~3時間まで安定して涙液に薬物を供給できることを明らかとした。本剤形はマイボーム腺をターゲットとした新規剤形に繋がることとともに、持続的な涙液中への薬物供給が可能である。すでに作成しているレボフロキサシンナノ結晶含有ゲルパッチにおいても、同様の薬物挙動が期待でき、広範囲な眼抗菌療法の確立及び使用時の煩雑性改善につながることが期待できる。
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