研究課題
プラチナ系抗癌剤による副作用発現の予測は困難を極めることから、その早期発見ならびに予防法の確立が急がれる。動物実験ではシスプラチンが亜鉛や銅といった金属と置換する現象が報告されており、生体においてもプラチナがバイオメタルと相互作用することが推察される。本年度は、バイオメタルの網羅的解析手法の確立を目的として、標準血清に既知量のプラチナを添加して作製したスパイクサンプルについてICP-MSを用いたバイオメタルの定量を試みた。76種類の金属元素について解析を行ったところ、プラチナ添加量に応じて濃度が変化した金属元素は認められなかった。また、スパイクサンプルに対する灰化処理の有無によって変動する増加する金属元素が11種類、減少する金属元素が4種類存在した。バイオメタルの網羅的解析を実施する上でサンプルの前処理条件によっては元素個々で測定値への影響が異なる可能性があり、処理条件に関しては変動要因の解明も含めて引き続き検討する予定である。一方、プラチナ系抗癌剤を含む癌化学療法施行患者より得られた血液サンプルについてもバイオメタルの網羅的解析の予備検討を行った。その結果、検出可能であった33種類のバイオメタルについて、抗癌剤投与後の経過日数に伴うプラチナ濃度の減少に応じて増加や減少する数種類のバイオメタルが存在した。本年度検討した対象患者および測定サンプル数が少なかったことから、今後は既存のサンプルについて同様の検討進めることでプラチナ系抗癌剤投与によって変動するバイオメタルの個体間差や変動の要因についてさらに検討を進めていく予定である。また、既述の通り、サンプルの処理方法によってもバイオメタルの測定値が影響を受ける可能性があることから培養細胞サンプルについてもサンプル処理条件の検討を進める予定である。
3: やや遅れている
スパイクサンプルにおける検討から灰化処理の有無によって濃度が変動する金属元素が存在し、バイオメタルの網羅的解析を実施する上でサンプルの前処理条件によっては対象とする金属元素個々で処理方法を変える必要性が生じたため。なお、測定値に影響する要因については不明である。
バイオメタルの網羅的解析を実施する上でのサンプル処理条件について、変動要因の解明も含めて引き続き検討する予定である。また、未測定の既存のサンプルについて検討を進めることでプラチナ系抗癌剤投与によって変動するバイオメタルの個体間差や変動の要因について検討を進めていく予定である。さらに、培養細胞由来サンプルの処理方法についてもサンプル処理条件の検討を進める予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件)
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