研究課題/領域番号 |
26460245
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研究機関 | 姫路獨協大学 |
研究代表者 |
中村 任 姫路獨協大学, 薬学部, 教授 (80379411)
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研究分担者 |
高橋 稔 姫路獨協大学, 薬学部, 助教 (80620872)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | プラチナ |
研究実績の概要 |
プラチナ系抗癌剤による副作用発現の予測は困難を極めることから、その早期発見ならびに予防法の確立が急がれる。本年度は、前年度に引き続きプラチナ系抗癌剤を含む癌化学療法施行患者より得られた血液サンプルについてプラチナに加えて6種類のバイオメタル(マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、鉛)に着目して血漿中濃度解析を行った。対象は術前がん化学療法(FP療法:シスプラチンと5-FUの併用投与)を施行した食道癌患者5症例とした。FP療法1サイクル目開始後から2サイクル目開始前までの間(シスプラチン投与開始後32日目まで)を対象期間として早朝採血されたサンプルについて、強酸により湿式灰化し、バイオメタルをICP-MS法を用いて測定した。その結果、対象症例すべてにおいて、血漿中の鉄濃度はFP療法開始一週間程度までに薬物投与開始前の値と比較して最大約2倍に上昇し、2週間までに薬物投与開始前の値まで回復した。対象期間中、マンガン、銅、亜鉛、鉛についても血漿中濃度の変動は認められたものの、すべての対象患者に共通した変動傾向は認められなかった。また、ほとんどの測定検体でコバルトは検出限界以下であった。次に、血漿中鉄濃度の変動要因の解明を目的として血液検査値のカルテ調査を行った。生体内に存在する鉄の60%~70%は赤血球中のヘモグロビンに存在することから、赤血球値とヘモグロビン値を調査したところ、4名の患者ではヘモグロビン値はFP療法開始後に低下していたが、1名はむしろ上昇する傾向にあった。なお、後者では赤血球濃厚液の投与ならびに経口鉄剤の投与が行われており、血中鉄濃度の変動要因の詳細は不明だが、血漿鉄の上昇には一部ヘモグロビン由来の鉄が関与していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
検討対象とするバイメタルを絞り込んだことで効率的に血漿中濃度の解析を進めることができた。この中で一過性の血漿中鉄濃度の変動を見出すことができたことは順調に成果を挙げられたものと考えている。血漿中に増加した鉄の由来とシスプラチン投与との関連性を明らかにできればプラチナ製剤の生体内挙動や副作用発現機序の解明に繋がるものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
血漿鉄の上昇には一部ヘモグロビン由来の鉄が関与していると考えられるが、検討症例数が少ないことから、今後さらに症例数を増やして検討を進める予定である。また、貯蔵鉄等についても検討を進め、プラチナ系抗癌剤投与によって変動するバイオメタルの変動要因や個体間差の要因について検討を進めていく予定である。
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