研究課題
近年,慢性腎不全の発症・進展に,酸化ストレスの密接な関与が明らかになってきたが,抗酸化剤の適応を有する薬剤は殆どない上,新規薬剤の開発及び上乗せ処方は医療経済的な負担が大きい.本研究では、慢性腎不全の治療に使用されている既存薬物と機能性食品素材とのコンビネーションによる新たな抗酸化作用を活用して,酸化ストレスを軽減させる新規治療及び予防戦略を提案する.具体的には,抗酸化作用をはじめとした多機能性の食品素材(キトサン及び環状オリゴ糖シクロデキストリン(CyD)等)と,多面的作用を有する慢性腎不全治療薬とのコンビネーションによる処方改良等に関するプレフォーミュレーション研究を実施して,有効性・安全性に優れ,患者に優しい,加えて医療経済の面からも有用な製剤設計と投与設計の基盤を構築することを目的とする.研究初年度として慢性腎不全治療・予防における薬物及び機能性食品素材のin vitroにおける抗酸化作用のスクリーニングを行った.慢性腎不全に対する治療薬として使用されている各種降圧薬,経口血糖降下薬,脂質代謝改善薬及び予防が期待され,科学的根拠を持つ各種機能性食品素材について,各種酸化ストレスマーカーにより既存の効果に加えた抗酸化作用について検討した結果,脂質吸収抑制作用を有するキトサンに加え,シクロデストリンにおいて、間接的な抗酸化作用が観察された.今後,機能性食品であるキトサンに加え、シクロデストリンの多面的抗酸化療法への応用を試みる予定である.
2: おおむね順調に進展している
慢性腎不全治療・予防における薬物及び機能性食品のin vitroにおける抗酸化作用をスクリーニングした結果,各種生活習慣病治療薬において一部薬物においてある程度の抗酸化作用を有する薬物を見つけることはできた.一方,各種機能性食品素材の中で、キトサンに加えて、シクロデキストリンにおいて,既存の効果に加えた間接的な抗酸化作用を確認することができた.以上の結果から,これら薬物及び機能性食品に対して,実際にin vivoへの応用について検討を継続できるため,初年度としてはおおむね順調に進展していると考えられる.
初年度に得られた結果はあくまでもin vitroのみの結果であり,今後,病態モデル動物を利用した薬物及び機能性食品投与による生化学値および抗酸化作用との関連性を検討することにより,in vitroで得られた結果の妥当性を評価する.具体的には、in vitro スクリーニングにより抗酸化作用を有する可能性が認められた薬物及び機能性食品素材に対して,病態モデル動物を用いたin vivoでの検討を行う.病態モデルとして,慢性腎不全を設定し,評価項目として各種酸化ストレスマーカーを用いた抗酸化作用,細胞内シグナル伝達物質および生化学値の変動について検討を行う.また,免疫染色法などの手法を用いて組織を評価する.
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