研究課題
【概要】小脳のプルキンエ細胞は平行線維と登上線維による興奮性入力を受けている。申請者は、発達期においてこの2種類の興奮性入力がそれぞれGluRδ2と電位依存性カルシウムチャネルCav2.1を強化分子として互いに競合し、登上線維単一支配化や協調運動発現に関わっていることを明らかにしてきた。申請者は「異種シナプス間競合関係が成体期においても存在し、この均衡維持が小脳の機能発現に重要である」という仮説を立て、この実験的証明のため誘導型Cav2.1欠損マウスを用いた形態学的・電気生理学的解析を行った。【平成26、27年度の実績】プルキンエ細胞特異的誘導型Cav2.1欠損マウスにおける神経回路を形態学的、電気生理学的に解析し、以下の所見を得た。①欠損誘導後のCav2.1発現量の経時的低下②平行線維支配領域の近位拡大と登上線維支配領域の近位縮小、③登上線維-プルキンエ細胞多重支配の再出現がみられないことを示した。④Cav2.1欠損誘導後2週からの協調運動能が低下、⑤欠損誘導後3週からaldolaseC陰性領域における進行性のプルキンエ細胞死、⑥小脳帯状構造の境界領域が不明瞭になっている様子を帯状領域特異的マーカー分子発現によって明らかにした。⑦登上線維-プルキンエ細胞支配単一支配が維持されている様子を電気生理学的解析によって明らかにした。以上の結果は成熟プルキンエ細胞において平行線維-登上線維間の異種シナプス間競合関係が存在し、この均衡維持においてCav2.1が登上線維入力の強化分子として機能していることを強く示唆するものであった。さらにCav2.1は成体小脳においてプルキンエ細胞の生存、小脳帯状構造依存的な分子発現の維持に関わっていることが示唆された。【平成28年度の実績】これまでの研究で得られた知見をまとめ、論文を作成している段階である。これまでの成果は第39回日本神経科学大会、第122回日本解剖学会総会で発表された。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (2件)
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