研究課題
本研究課題では、バレル神経回路において興奮性細胞への入力を増強し、かつ抑制性介在細胞への入力を抑制することにより、興奮・抑制バランスの修飾作用を発揮する可能性のある受容体としてニコチン性アセチルコリン受容体に注目した。H26-27年度には3種類のニコチン性アセチルコリン受容体サブユニットのmRNAの脳内発現を蛍光in situ hybridization法(FISH)で解析し、さらに脳内で最も多いb2サブユニットに対する抗体を作成しその特異性を検証した。この抗体は強制発現細胞やウエスタンブロットでは特異性が確認できたものの、マウス脳の組織切片上では検出効率が悪かった。mRNA、タンパク質レベルの解析結果を総合し、b2サブユニットを解析対象とするのは困難であると結論したため、H28年度は方針を変更し、次に多い発現サブタイプであるa7サブユニットとその細胞膜局在に必須の関連タンパク質(TMEM35)を中心に解析を進めた。TMEM35の方がa7サブユニットそのものよりも遥かに発現レベルが高く、検出効率が良かったため以降の解析はTMEM35を中心に進めた。特異的プローブと抗体を用いた解析の結果、TMEM35は脳内に広く発現しているものの、発現パターンの強弱には神経化学特性との関連性が認められた。三叉神経核領域の興奮性細胞は抑制性介在細胞よりも発現レベルが高く、逆に視床や大脳皮質では抑制性介在細胞で発現レベルが高かった。これらの結果からはアセチルコリン受容体が、三叉神経核レベルと視床・大脳皮質レベルでは逆の作用を持ち、興奮・抑制バランスの調節に寄与している可能性が示唆された。
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