研究課題/領域番号 |
26460255
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
木村 英二 岩手医科大学, 医学部, 講師 (50405750)
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研究分担者 |
人見 次郎 岩手医科大学, 医学部, 教授 (00218728)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 脈管形成 / 血管新生 / ゼブラフィッシュ / ゲノム編集 / 遺伝子破壊 / 血管内皮細胞 / 動静脈分化 / 形態形成 |
研究実績の概要 |
我々は、小型魚類のゼブラフィッシュを用いて、初期の脳血管系がいかにして構築され、そののち どのようにして脊髄の血管系と統合されるか、その全過程を明らかにすることに成功した。そしてetsrp/etv2遺伝子の発現を抑制し、血管形成を阻害した胚において発現が上昇する遺伝子群を、脳血管系が形成されるタイミングでマイクロアレイ法により解析した。1.5 倍以上の上昇を示した遺伝子群の発現パターンを、我々が詳細に解明した血管形成過程やその動静脈分化領域と比較し、関連領域で特異的に発現している11 遺伝子を抽出した。これらの遺伝子群には、頭部の血管形成領域の神経組織や間質に特異的に発現している遺伝子や、脳動脈の形成領域で発現を示す遺伝子、脳静脈の形成領域に近接した神経組織で発現を示す遺伝子、伸展する血管が接触する脳幹-脊髄の腹側領域で特異的な発現を示す遺伝子などが含まれている。本研究課題では、これらの遺伝子群を破壊(ノックアウト)したゼブラフィッシュ系統をそれぞれ作成し、それらを用いて血管形成や動静脈分化への影響を評価し、血管形成の鍵となる新たな遺伝子の同定を目指す。遺伝子破壊系統の作成の際には、血管系で特異的に蛍光を発するTg(fli1a:EGFP)y1 の系統を用いることで、遺伝子破壊の血管系への影響をイメージングにより可視化し簡便に評価を行う。同時に動静脈分化マーカー遺伝子の発現変化、あるいは電子顕微鏡観察などを併用して多角的に血管形成や動静脈分化への影響を評価する。表現型の得られた遺伝子に関しては、mRNA による表現型の回復を確認し対応する遺伝子の関与を検証し、脳血管形態の形成メカニズムの解明を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26、27年度で、対象とした 11 遺伝子をそれぞれ破壊した系統の樹立を目指した。27年度末までに、ゲノム変種活性を有するsgRNAを10遺伝子に対して作成に成功し、血管系で特異的に蛍光を発する組み換えゼブラフィッシュとの交配によるF1世代の飼育を進めている。残る1遺伝子に関しても複数の標的領域に対するsgRNAを新たに設計・合成し、そのゲノム編集活性の評価を準備している。すでにF1世代の飼育を進めている10遺伝子に関しては、28年度中にゲノム変異の同定とホモ個体の作成、血管形成への影響の評価を行うための準備は整っており、概ね計画通りに順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
継続して、11遺伝子の遺伝子破壊体の作成を進める。 ゲノム編集活性を認めた10遺伝子に関しては、すでに血管系で蛍光を発する遺伝子組み換え体と交配し得られたF1世代を飼育している。育ったF1世代に対しては、各個体ごとにfin clip法によるゲノム抽出とHMA法による変異の同定を行い、各変異パターンごとにシークエンス解析を行い、フレームシフトを生じる変異を有する個体を同定する。同一変異体の雌雄を交配してホモ接合体のノックアウトゼブラフィッシュの系統の樹立を目指す。系統樹立後は、その表現型解析を進めていく。ゲノム編集活性を有するsgRNAが得られなかった1遺伝子では、標的部位を変えて新たに設計・合成を行い。活性を有するsgRNAが得られるように実験を進めていく。編集活性を有するsgRNAが得られたのちは、同様にF0世代、F1世代を飼育して解析を進めていき、ホモ接合体の樹立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
27年度では、予定した人件費が別予算枠で獲得できたため、その分使用する金額に余裕ができた。しかし効率的にインジェクションを進めるためにインジェクションシステム一式を購入したため、繰越金額はほとんど生じていない。
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次年度使用額の使用計画 |
上記のごとく繰越金額は実際にはほとんど残ってはいない。28年度の研究費は遺伝子破壊体作成のために科研費使用のルールを厳守して使用していく。
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