我々は、ゼブラフィッシュを用いて、初期の脳血管系形成過程の全容を明らかにすることに成功した。そしてマイクロアレイ法により、etsrp/etv2遺伝子の発現を抑制した際に発現が上昇する遺伝子群を、脳血管系が形成されるタイミングで解析した。1.5 倍以上の上昇を示した遺伝子群の発現パターンをデータベース上から取得し、脳血管形成領域や動静脈分化領域と比較することで、その関連領域で特異的に発現している11 遺伝子を抽出した。これらの遺伝子群には、頭部の血管形成領域の神経組織や間質で特異的に発現している遺伝子や、脳動脈の形成領域で発現を示す遺伝子、脳静脈の形成領域に近接した神経組織で発現を示す遺伝子、伸展する脳血管が接触する脳幹-脊髄の腹側領域で特異的な発現を示す遺伝子などが含まれていた。本研究課題では、これらの遺伝子群を破壊したゼブラフィッシュ系統をそれぞれ作成し、それらを用いて血管形成や動静脈分化への影響を評価し、血管形成の鍵となる新たな遺伝子の同定を目指す。破壊体の系統作成には、血管系で特異的に蛍光を発するTg(fli1a:EGFP)y1 を用いることで、イメージングにより血管形成への影響を可視化する。表現型が認められた系統に対しては、さらに動静脈分化のマーカー遺伝子の発現変化なども併せて解析することで、脳血管形成メカニズムの解明を目指す。2016年度には、継続して遺伝子破壊体の作成を行い、5遺伝子でフレームシフトを生じるホモ接合遺伝子破壊体を取得した。しかしこれらの破壊体においては血管形成に目立った異常は認められなかった。残りの5遺伝子に関しては、フレームシフトを生じる雌雄体が揃わなかったため現在次世代を飼育しており今後継続して解析していく。1遺伝子に関しては、フレームシフトを生じる個体が得られなかったため、F0世代から作成し今後解析していく。
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