研究課題
哺乳類独自の下顎形態が進化した背景にある発生学的変化を解明するため、マウスとニワトリを用いた比較分子発生学を行った。哺乳類にはHoxコードのデフォルト状態に制御される「近位部」と、Otx2陽性の神経堤細胞に制御される「遠位部」という、2つの発生モジュールが存在するという仮説を立て、これを実証したいと考えている。Hoxa2のノックアウトマウスと、神経堤細胞特異的にHoxa2を強制発現させたマウスにおける顎顔面領域の表現型を詳細に調べるため、三次元再構築ソフトウェアを用いて解析した。またOtx2陽性の神経堤細胞が由来する形態要素を同定するため、Otx2のプロモーター領域がCreリコンビナーゼ遺伝子に接続されたコンストラクトをゲノム中に挿入したマウス(Otx2-Creマウス)が使用可能であるかについて検討している。マウス胎仔におけるOtx2の遺伝子発現パターンを詳細に調べ、Otx2-CreマウスとR26R-lacZマウスの掛け合わせにより得られたマウス胚のデータと比較している。次に、哺乳類と他の羊膜類の鼓膜形成メカニズムの共通点と相違点を調べることを目的として以下の実験を行った。マウスの鼓膜形成に関わる新規分子を探索するため、野生型マウスと鼓膜欠損モデルマウス(Gscノックアウトマウス)の中耳形成領域のマイクロアレイ解析を行い、鼓膜形成に関わる候補遺伝子を複数得た。また、ニワトリ胚における鼓膜の形成過程を詳細に調べたところ、マウスの鼓膜形成メカニズムとは大きな相違点があることを示唆する結果を得た。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り研究を遂行している。
当初の計画に加え、マウスの鼓膜形成に関わる新規分子を探索する研究を進めている。野生型マウスと鼓膜欠損モデルマウス(Gscノックアウトマウス)の中耳形成領域のマイクロアレイ解析による新規候補遺伝子の探索をさらに進めていく。
平成27年度は当初の予定額程度を使用した。平成26年度分については、当該年度に他の助成金を獲得し、共通で使用する消耗品分を支出したため、本予算には残額がある。
残額分は、当初の計画に加えて新たに開始した実験研究(マイクロアレイ解析等)を遂行するために充てる。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)
Congenital Anomalies
巻: 56 ページ: 12-17
doi:10.1111/cga.12132
生体の科学
巻: 66 ページ: 234-239