研究課題
これまでの研究より、哺乳類下顎の近位モジュールに属する中耳の構成要素である鼓膜が哺乳類系統と爬虫類-鳥類系統で独立に獲得されたことが強く示唆された。そこでマウスとニワトリにおける鼓膜の形成過程をさらに詳細に比較し、両者における中耳形成の相違点を明確にしようと考えた。成書によれば、鼓膜は「第1咽頭溝と第1咽頭嚢が、第1, 2咽頭弓の境界に沿って会合することで形成する」とされるが、その根拠となる研究データは不明確であった。そこでマウスとニワトリの咽頭弓の前後軸に沿った形態パターニングに着目して鼓膜形成過程の解析を行った。マウスHoxa2の発現プロファイル解析や、第2咽頭弓が消失して代わりに第1咽頭弓が重複するHoxa2ノックアウトマウス胚(第1咽頭弓重複胚)を調べた結果、マウスの鼓膜は第1咽頭弓内で形成され、その形成には第1咽頭弓の存在が必要十分であることがわかった。ニワトリでも同様にHoxa2の発現プロファイル解析とニワトリ・ウズラキメラ実験による第1咽頭弓重複胚を解析したところ、ニワトリの鼓膜は第2咽頭弓内で形成され、その形成には第2咽頭弓が中心的な役割を果たしていることがわかった。これらの結果から、マウス・ニワトリの鼓膜形成過程が共に従来の理解とは異なることを明らかにした。また、鼓膜形成においては、第1, 2咽頭弓の境界ではなく、鼓膜を構成する上皮とそれに付着する骨要素を由来する間葉との相互作用が中心的な役割を果たすことが示唆された。以上の研究結果を原著論文として発表した。
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Development
巻: 144 ページ: 3315~3324
10.1242/dev.149765
http://www.tmd.ac.jp/archive-tmdu/kouhou/20170919_2.pdf