研究課題/領域番号 |
26460259
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
松下 文雄 藤田保健衛生大学, 保健学研究科, 准教授 (50298543)
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研究分担者 |
亀山 俊樹 藤田保健衛生大学, 付置研究所, 助教 (60298544)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | NZF / Myt / neural zinc finger / ミエリン / 変異マウス / 神経回路 / 関節拘縮 / 転写因子 |
研究実績の概要 |
1. 組織学的解析 NZF-2-/- マウスおよびNZF-2-/-;NZF-3-/- マウスでは、出生直後に呼吸不全により致死となる。脊髄神経の神経発生異常について、野生型、NZF-2-/-、NZF-3-/-、NZF-2-/-;NZF-3-/- の各遺伝子型のマウス個体について、組織学的に比較解析を行っている。NZF-2-/-;NZF-3-/- では、四肢の先端部への神経投射不全が認められている。その原因について、脊髄神経細胞の増殖速度の減少や神経細胞分化後の細胞死の増加の可能性について、解析を進めている。 2. 遺伝子発現変化解析 NZFファミリー遺伝子産物はzincフィンガーを有しDNAに結合する転写因子の構造を持つため、ノックアウトマウスでは下流遺伝子の発現変化が予想される。野生型とNZF-2-/-;NZF-3-/- マウスの個体について、NZF-2とNZF-3の発現が際だって強い12日胚頭頸部の全RNAを用いた遺伝子発現解析では、神経細胞の減少との関連が疑われる一部遺伝子の発現低下を除き、遺伝子発現の大きな変化は見られなかった。このことから、NZF-2-/-;NZF-3-/- マウスの神経回路形成不全は、組織レベルよりも特定の細胞レベルでの限られた(変化する細胞の少ない)発現変化や、選択的スプライシングパターンの変化という、より繊細な変化の寄与が示唆されると考えている。遺伝子の選択的スプライシングパターンの変化が、マウスの脳の形成・機能発現過程で起きていれば興味深い。さらに、組織の一部や特定の細胞レベルでのパスウェイ解析的な手法が適用できないか、検討中である。 3. 成果発表 組織学的解析および遺伝子発現変化解析を進める上で比較対照となるNZF-2-/- マウスおよびNZF-3-/- マウスについて、現在までの知見をまとめた論文を作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
NZF-2/-3ダブルノックアウトマウスでは、組織学的にいくつかの部位においてニューロフィラメント陽性神経線維の消失が認められる。その原因として、消失する神経線維をもつ神経細胞そのものの異常なのか、その神経細胞の周囲や投射先、あるいはその神経細胞へ投射する神経の異常に起因するのか、判断材料となる組織学的データの蓄積が思うように進んでいない。 一方、NZF-2/-3ダブルノックアウトマウスと野生型マウスを比較した遺伝子発現解析は、ニューロフィラメント陽性神経線維消失の原因についてもう1つの重要な手がかりを与えてくれる。マイクロアレイによる比較では、神経線維に含まれ、その消失の結果減少したと考えられる一部の遺伝子を除き、遺伝子の発現量に大きな変化がなく、選択的スプライシングパターンの変化などより繊細な変化が想定された。そこで、高価な発現解析を行う前に、より細かな脳の領域分けや組織内の細胞を選別採取など、サンプリング方法をより慎重に再検討する必要性があると判断した。その検討・準備中のため、当初計画より遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
NZF-2/-3ダブルノックアウトマウスで認められる脊髄の神経線維形成不全の原因について、組織学的なデータをさらに蓄積していきたい。引き続き、脊髄神経細胞の増殖の減少の可能性については細胞増殖(BrdUの取り込み率)を、神経細胞分化の不全の可能性については分化マーカーIsl-1の抗体染色を、神経細胞分化後の細胞死の増加の可能性についてはTUNEL法と抗Caspase-3抗体染色により解析する。 遺伝子発現解析については、細胞レベルでの発現比較を念頭に、より細かな細かな脳の領域分けや組織内の細胞の選別採取を検討したい。また、解析対象を単なる発現量変化だけではなく、選択的スプライシングパターンの変化にまで拡張し、エクソンアレイ・RNA-Seqを用いて比較検討する。 また、出産直後に致死となるノックアウトマウスを用いる実験には制約があるため、機能確認実験として当初考えた組織培養系だけでなく、細胞培養系を検討する。古典的な基質上の軸索伸長や生存率の解析に、細胞株を用いた出版済みの実験で効果の確認できているRNAiを用いた機能阻害の組み合わせることを考えている。 アウトプットとしては、NZF-2-/- マウスおよびNZF-3-/- マウスについての知見を論文の形にまとめたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでの遺伝子発現解析結果から、より限局した組織採取や組織内の細胞を選別採取して細胞レベルの発現変化を見るなど、より繊細な発現比較が求められることがわかり、高価な解析キットを用いてサンプル数を増やす前にサンプル調製方法を慎重に再検討し、より効果的に助成金を使用する必要があった。そのため、当初平成27年度使用予定の予算を次年度に繰り越すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
遺伝子発現解析用試薬キットやパスウェイ解析委託、マウスの飼育費用、組織化学や培養等の試薬購入に充てる予定である。
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