研究課題/領域番号 |
26460266
|
研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
八月朔日 泰和 山形大学, 医学部, 准教授 (00372334)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 免疫組織化学染色 / 免疫電子顕微鏡 / プルキンエ細胞 / 小脳 / subsurface cistern / ロータロッド試験 / 特異抗体 / 共焦点レーザー顕微鏡 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、脂質性二次伝達物質ジアシルグリセロール(DG)のリン酸化酵素であるジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)ファミリーのうち、ε型DGK(DGKε)について、申請者が確立した特異抗体を用い、DGKεの神経細胞における詳細な発現局在解析を行った。さらに、DGKε-KO(ノックアウト)マウスを用いた行動解析を行った。 特異抗体を用いたDABおよび蛍光多重染色による解析において、DGKε免疫反応は大脳皮質、海馬、線条体および小脳の投射ニューロンにおいて顆粒状構造物として検出された。さらに1型イノシトール三リン酸受容体(IP3R1)とDGKεが共存すること、また基質を共有すると考えられるジアシルグリセロールリパーゼα(DGLα)とDGKεが非常に近接して局在することが明らかとなった。DGKεが豊富に発現する小脳について包埋前金コロイド銀増感免疫電子顕微鏡法を施行したところ、DGKεはプルキンエ細胞の樹状突起形質膜直下の滑面小胞体であるsubsurface cisterns(表面下槽)内部に検出された。行動解析においてはロータロッド試験において、DGKε-KOマウスは野生型マウスに比べ、協調運動の学習能力が低下していた。 以上より、DGKεは小脳プルキンエ細胞のsubsurface cisternに局在し、カルシウムチャンネルであるIP3R1やエンドカンナビノイド産生酵素であるDGLαと密接な関連をもって小脳機能に関与する可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究計画では、以下の目標を挙げた。 DGKεの神経細胞内発現細胞同定と微細局在解析を行う。1)蛍光多重染色法による解析:主にDGKεが豊富に発現する小脳に注目し、共焦点レーザー顕微鏡で蛍光多重染色法を行う。2)免疫電子顕微鏡法による解析:包埋前DAB・銀増感免疫電子顕微鏡法と包埋後免疫電子顕微鏡法により、DGKεの神経細胞内微細局在の解析を行う。 当該年度に関して申請者はDGKεの神経細胞内発現および微細局在を、共焦点レーザー顕微鏡および免疫電子顕微鏡法を用いて明らかにし、論文作成および投稿を行った。以上より、当該課題の「研究の目的」に対する達成度は、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、網膜に豊富に局在するDGKβとDGKεの網膜における微細局在解析を、DGKβは双極細胞と水平細胞樹状突起について、DGKεは光受容細胞について、包埋前DAB・銀増感免疫電子顕微鏡法と包埋後免疫電子顕微鏡法により行う。さらに、明暗条件の相違によるDGKβとDGKεの網膜内発現および局在変化について検討する。また、特異抗体を用いた免疫沈降法などにより、DGKβおよびDGKεのシグナル伝達複合体の解明を行う。
|