平成28年度は、DGKbおよびDGKe-KOマウスの神経細胞および網膜の比較解析を行った。また、神経細胞におけるDGKeの詳細な微細局在を共焦点レーザー顕微鏡を使用した蛍光多重染色法と免疫電子顕微鏡法により検討するとともに、DGKe-KOマウスの行動実験を行い、DGKeの機能解明を進めて論文発表を行った。 DGKeについて細胞内小器官における発現局在を検討したところ、小脳プルキンエ細胞においてDGKeが形質膜直下の滑面小胞体である表面下槽内に局在し、内在性カンナビノイドの主要産生酵素であるジアシググリセロールリパーゼaと近接して局在することが明らかになった。また、DGKe-KOの行動解析において、DGKeを欠失すると協調運動の学習能力が低下することを報告した。KOマウスの解析では、ゴルジ鍍銀法によりDGKe-KOマウス小脳プルキンエ細胞を解析したところ、棘突起の数が野生型マウスに比べ増加している傾向が認められた。DGKb-KOマウスの線条体投射ニューロンの棘突起は野生型に比べ減少することが報告者により明らかになっており、DGKeの機能解明をさらに進める上で非常に興味深い。電子顕微鏡を用いたDGKbおよびDGKe-KOマウスの神経細胞、網膜構成細胞における細胞内小器官の形態変化については、野生型マウスとの間に差は認められなかった。明暗条件の違いによるDGKアイソザイムの発現局在変化について解析したところ、DGKbおよびDGKeに変化を認めなかった。 以上の結果から、DGKe欠失により細胞の形態に変化が生じることによって細胞内シグナル伝達が変化し、個体の運動機能に影響をおよぼす可能性が示唆された。
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