研究課題
いままでの研究でシネミンノックアウトマウスでは10-12ヶ月のマウスで持久力が有意に低下しており、骨格筋の速筋・遅筋の線維構成が変化していることを明らかにしてきた。今回、筋線維の構成に関わる蛋白質の発現を調べるためにウエスタンブロット法により、骨格筋の線維構成に関係することが知られている alpha-actinin (ACTN) のアイソフォームの一つであるACTN3の蛋白質発現を調べた。これまでの研究ではsyneminの結合蛋白質の発現量には変化が見られなかったが、今回の検討でヒラメ筋ではACTN3の蛋白質発現量が減少していることが明らかになった。以前の研究でsyneminはACTN2と直接結合することが知られていた(Bellin et al., 2001)が、ACTN3についてはまだ調べられてはいない。そこでsyneminとACTN3の関係を調べるために、免疫沈降法による共精製が可能かどうかを確認した。その結果、syneminはanti-ACTN3の抗体で共精製されることが分かった。このことによりsyneminとACTN3は複合体を形成している可能性が示唆された。また、EGFPを結合したsyneminとtag-RFPを結合したACTN3の遺伝子を作製して分化前の筋芽細胞株C2C12に形質導入した。共焦点レーザー顕微鏡でそれぞれの局在を観察したところ、syneminとACTN3は高確率で共局在していることが明らかになった。さらにsyneminとACTN3が直接結合する可能性を考えGST プルダウン法による共精製を計画した。現在、GSTのついたsyneminとHis-tagのついたACTN3の作製は完了し、大腸菌に発現させる条件と精製する条件を検討中である。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画から変更はあったものの、ACTN3の発現変化の発見により、筋原線維の変化に関与する分子メカニズムの解明に進展があった。
(1)syneminとACTN3の結合能を調べるため、GST プルダウンアッセイを行う。また、結合する場合は結合部位の特定も行う。(2)WTとKOマウスの経時的な筋線維の構成変化を観察する。現在、10-12ヶ月のマウスを観察しているが、生後4週間及び8週間についても観察する。(3)EGFP/tag-RFPを結合したそれぞれの蛋白質についてC2C12の分化後の局在を確認する。(4)syneminは肝臓の伊東細胞に発現することが知られているが、その機能は明らかではない。人工的肝壊死・線維化モデルを作成し、WTとKOマウスで差が出るかどうかを検討する。
動物実験施設の改修(改修後はバイオリソースセンターと改称)にともない、一時的にノックアウトマウスを飼育していた場所から、改修後の建物に搬入するにはマウスの微生物クリーニングが必要となった。その為にマウスの飼育規模を大幅に縮小することになり、飼育に要する費用が大幅に減額となって、余剰金がでた。
繰越額は次年度の消耗品費の一部に充当する予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件)
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