研究実績の概要 |
肝臓の星細胞は肝臓が損傷を受けると筋線維芽細胞に分化し、コラーゲンを主成分とする細胞外マトリクス(ECM)の産生により肝線維化に関与する。中間径フィラメント蛋白syneminは肝臓の星細胞に発現し、人ではウイルス性肝炎になると増加する事が知られているが、その生理的意義は未だ不明である。今回、既に作成済みのsynemin欠損マウス(KOマウス)を用い、四塩化炭素で肝炎を起こすことにより、syneminの肝炎における役割を調べた。 1)急性肝炎での影響:40%四塩化炭素/paraffineを150μl腹腔に注入し、1,2,3日後の組織の形態変化及び関連タンパクの発現量を観察した。マッソントリクローム染色を行い、ECMを青く染色したところ、KOマウスの肝臓は野生型に比べ、ECMが少ないことが分かった。またwestern blottingにより発現タンパクの量を確認したところ、KOマウスでは肝星細胞のマーカーのGFAPと筋線維芽細胞のマーカーのalpha-smooth-muscle-actinの発現量が野生型に比べ有意に低下していることが分かった。さらにECMの主成分であるcollagen 1の発現の低下も明らかになった。このKOマウスでのcollagen 1発現量の低下は蛍光抗体染色からも確認できた。一方、野生型マウスでのSynemin発現量は四塩化炭素投与後1~3日目にかけて増加していた。 2)慢性肝炎での影響:40%四塩化炭素/paraffineを20μlずつ週に2回、6週間にわたり腹腔に投与した。投与終了後1週間目に肝臓を取り出して凍結切片を作製し、マッソントリクローム染色をしたところ、KOマウスでは野生型に比べ線維化が抑制されていた。 以上により、syneminは星細胞において増殖、分化または細胞外マトリクスの産生のいずれかに関与していることが示唆された。
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