研究課題/領域番号 |
26460269
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
馬場 敦 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (70405215)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 発生・分化 / 糖鎖 / 細胞・組織 / 平面内細胞極性 / 脳神経 |
研究実績の概要 |
Celsr1欠損マウスが生殖器系に代表される管腔様構造の形成不全を呈し、この表現型が糖転移酵素欠損マウスの表現型と酷似することを発見した。このマウスは、雄ではウォルフ管の形成不全による精巣網から精巣上体への精子の移行ブロック、雌では子宮管や卵管の節形成不全により不妊に至ることを見いだした。他のPCP関連遺伝子産物についても各器官形成期の局在を解析したところ、FZD3、FZD6はCELSR1とともに精巣網および精巣上体接合部に発現しており、CELSR1がこれらの遺伝子産物と協調し精巣網形成を制御することが示唆された。CELSR1ホモ欠損マウスより卵を採取し野生型マウスの精子と体外受精後培養したところ、ほぼ全ての受精卵が2細胞期に移行できなかった。CELSR1欠損マウス雌でもconnexinの局在に影響はなく子宮内の黄体の数に異常がみとめられなかったことから、受精後卵子の成熟不全により不妊にいたることが考えられた。 糖転移酵素とCELSR1のクロストークを調べる目的でCELSR1の2箇所のEGF-like motifとヒトIgG Fc領域との融合分泌蛋白質(EGF1/2-Fc)を作製し3H-fucoseでラベルしたところ、CELSR1はこれらの候補配列において、O-フコシル化されFRINGE修飾されることが明らかとなった。フコシル化サイトの点変異により、EGF-Fcは分泌されず細胞内に蓄積した。哺乳類に存在する3種Fringeの全欠損細胞株を用い、EGF-Fcの分泌効率に及ぼす影響を定量的に解析したところ、Fringeの全欠損細胞株ではEGF1/2-Fcは分泌されず細胞内に蓄積する傾向を示した。これらの結果から、糖転移酵素の修飾によりCELSR1蛋白質の局在が制御され、管腔様構造の形成を制御する可能性が示唆された。現在、CELSR1全長蛋白質の点変異体を作製中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度予定していた組織学的解析はおおむね終了しており、ほぼ計画通り進行している。Fringe欠損株は脆弱であり遺伝子導入が困難で時間を要したため若干の遅れを生じたが、電気穿孔法により確実に遺伝子導入できる実験系を確立できた。また、これらの試行中に得られた知見が培養神経細胞への遺伝子導入の際に応用可能であることを見出し、次年度以降の計画の該当分を先行して進めることができ論文として投稿し受理された。
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今後の研究の推進方策 |
組織学的解析はほぼ終了し、当初予定のとおり培養系を用いた実験に移行する。電気穿孔法による遺伝子導入系が確立できたので、問題なく研究を遂行することができるものと考えられる。
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