研究課題/領域番号 |
26460271
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
竹田 扇 山梨大学, 総合研究部, 教授 (20272429)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 一次繊毛 / 細胞骨格 / アクチン / GFP / カルシウム |
研究実績の概要 |
平成26年度には一次繊毛と細胞分化、形態形成の関係を解析する上で基盤となる実験ならびに下準備を行なった。項目としては、 1. 細胞レベルでの一次繊毛形成および脱繊毛条件の基礎検討, 2. EGFP-アクチン発現ベクターの構築と安定クローンの単離、3. リガンド刺激を行なった際の細胞内カルシウム動態の解析、4. 運動繊毛動態の解析、である。 1. 初代海馬培養神経細胞を用いてin vitroでの繊毛形成率を解析し、培養後1週間で80%程度となること、繊毛関連分子ift88に対するsiRNA投与で細胞の有繊毛率が20%以下となること、をそれぞれ確認し、培養系の立ち上げを終了した。またこのときアクチン動態を解析すべきin vitro培養経過日数 (D.I.V.)も検討し、蛍光ラベルPhalloidinを用いた染色の結果、およそ2~3D.I.V.が最適であることがわかった。 2. EGFP―アクチンの発現ベクターを構築し、細胞に導入する。ベクターの構築は終了し、レンチウイルスでの発現系にパッケージングを行なった。その上で細胞骨格の動態を解析しやすい線維芽細胞に導入し、アクチン線維解析に適した発現量の細胞を同定し、クローニングを行なった。 3. 上記の1で行なった神経細胞で一次繊毛に発現する受容体の解析を行なった。これまでに発現が知られているG蛋白質共役受容体の他に、ヘッジホッグ関連蛋白質の発現検討を行った。また、ヘッジホッグ系のアゴニストであるSAG投与による細胞内カルシウム動態をFura2-AMを用いて解析し、一部の細胞で細胞内カルシウム振動が持続することを確認した。 4. 成長円錐解析を行う上で必要なCampenotチャンバーを用いた実験系の立ち上げの下準備を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カルシウム動態に関するデータの蓄積は進んだが、阻害剤を用いて細胞骨格動態に与える影響に関してはデータを取得することが出来なかった。主な理由としては、阻害剤を投与した際の神経細胞の生存率が低下し、影響評価を行うことが困難な事例が多かったこと、が挙げられる。現在、線維芽細胞を用いた実験系で条件の設定をし直しており、アクチン動態制御分子Racの定量には成功している。今後、神経細胞での検討を進める予定となっている。その一方で、平成27年度に行う予定であった神経細胞分化に関係する分子群の解析に使用する変異体分子発現コンストラクトは完成している。従って全体としては概ね計画通りに進んだと評価している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は主にアクチンの動態を制御する分子が一次繊毛の刺激によってどの様な動態変化を見せるかに着目して、研究を進める予定である。特に、成長円錐が形成されその伸長が起こる過程で微小管動態との関係が重要なポイントとなるため、異なる細胞骨格間の結びつけるプレクチン (plectin) などの分布変化やその動態に着目し、繊毛でのリガンド受容から細胞骨格変化、形態変化、細胞移動という一連の細胞過程を繋ぐことに注力する。 一方、平成27年度の当初計画にあった神経細胞の分化過程の実験に関しては、既に各種エフェクター分子の変異体発現コンストラクトが完成しているので、引き続き神経細胞での解析を進め、分化に関係する分子マーカーの検討を進めた上で、神経発生の分岐点に於ける一次繊毛の役割を解明する。 また、繊毛病の患者からのiPS細胞が入手可能となったので、ヒトの細胞を用いた解析を進め、これまでの成果を一次繊毛のヒト神経系での機能解明に役立てる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬購入費が予定よりも安くなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に繰り越しの上、試薬購入費に充当する。
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