研究課題/領域番号 |
26460271
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
竹田 扇 山梨大学, 総合研究部, 教授 (20272429)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 一次繊毛 / 神経細胞 / 細胞運動 / 細胞骨格 / 繊毛症候群 |
研究実績の概要 |
平成28年度には一次繊毛と神経細胞分化、形態形成の関係をin vivoで解析する上で基盤となる実験ならびに繊毛症候群の細胞を用いた実験を行なった。項目としては、 1. in utero電気穿孔法を用いた細胞標識追跡系の確立とそのマウス胚神経管での神経細胞分化解析への応用、 2. 繊毛症候群患者から得られた細胞を用いたアクチン動態の解析、である。 1. in utero電気穿孔法を用いて胎生14齢のマウス脳室下帯の神経幹細胞にEGFPを発現させるベクターを導入し、その細胞動態を観察した。この結果と、Kif3aやIft88など繊毛形成分子に対するshRNAを導入して一次繊毛を消失若しくは退縮させた細胞で得られた結果を比較した。繊毛形成が障害されると、脳室から脳軟膜表面への細胞移動が遅延すること、それに伴って細胞分化パタンが変化することをin vivoで確認した。現在、次項で述べる繊毛症候群で見られる遺伝子変異を導入することによって繊毛形成阻害或いは促進を行ない、細胞挙動に対する影響を調べている。 2. 繊毛症候群の一つでありジュベール症候群関連疾患 (Joubert syndrome related disease, JRD) の一つである有馬症候群患者の細胞を用いた実験系でアクチン動態を解析し、患者細胞でのストレスファイバー形成に異常がみられることが判った。現在定量的な解析を行なっている
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
細胞移動とアクチン線維の相互関係に焦点を当てた解析は、培養系での阻害剤を用いた系が上手く動かなかった為、上述の様に繊毛病の一つである有馬症候群の患者より得られた線維芽細胞を用いた実験系で代用することとし、正常細胞と患者細胞での比較を行なった。従ってこの部分の達成度が低くなっている。 ストレスファイバーの形態が神経細胞分化を評価する系はマウス胎児でのin uteroでの電気穿孔法を導入して、脳室下帯領域からの細胞移動を評価する系を確立することができた。これにより、一次繊毛と神経細胞移動の関係を評価する実験系は立ち上がったが、アクチン線維の動態は細胞の増殖不良により、また検討を予定していたプレクチンはその発現DNAコンストラクトの完成が遅れているため、この部分でも若干遅れ気味である。前者に関しては、細胞を不死化する実験を行うことで解決されつつあり、平成28年度には遅れを取り戻す予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は昨年度に果たせなかったアクチンの動態を制御する分子と一次繊毛の関係を解明する研究を進める予定である。特に、in uteroの電気穿孔法を用いてin vivoでの成長円錐形成とその伸長が起こる過程での微小管やアクチン線維の関係を解析する。具体的には夫々異なる色の蛍光蛋白質で標識した発現コンストラクトを導入し、その動態を観察する。 また、細胞骨格間の相互作用の解析が重要なポイントとなるので、異なる細胞骨格間の結びつけるプレクチン (plectin) の動態に着目し、繊毛でのリガンド受容から細胞骨格変化、形態変化、細胞移動という一連の素過程の関係性をin vivoで解析することを予定している。 一方、平成27年度の当初計画にあった神経細胞の分化過程の実験に関しては、既に各種エフェクター分子の変異体発現コンストラクトが完成しつつあるので、引き続き神経細胞での解析を進め、分化に関係する分子マーカーの検討を進めた上で、神経発生の分岐点に於ける一次繊毛の役割を解明する。 ヒトとの関連では、繊毛病の患者より得られた基底小体関連分子CEP290の遺伝子変異情報に基づいてその発現コンストラクトを作成する。これを用いてヒト線維芽細胞、並びにiPS細胞より樹立した神経細胞で様々な変異と繊毛形成の関係を整理する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入した試薬の価格変更があり剰余が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の消耗品に使用。
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