研究課題
本研究代表者らは、これまでに種々のがんにおいて、インフラマソーム構成分子ASCの発現量が、がんの悪性度と相関して低下することを報告した。さらに、他の研究グループからも、ASC遺伝子のメチル化と転移巣の形成を関連付ける報告がなされている。しかし、このような報告は多数あるものの、ASCとがんの悪性化を結びつける分子メカニズムには不明な点が多い。本研究課題では、ASCの発現量低下に伴うがん細胞の機能や形態の変化を基に、ASCによるがん細胞の転移形質の制御の分子機構について解析を行った。ASCの発現量低下が、がん細胞の転移形質に及ぼす影響について解析するため、マウスメラノーマ細胞株B16BL6にレトロウイルスベクターを用いてASCのshRNAを恒常的に発現させ、ASCノックダウン細胞を作成した。この細胞について種々の解析を行ったところ、細胞増殖能には変化が見られなかったが、実験的肺転移モデルにおける転移巣の増加、細胞運動能の亢進、浸潤突起形成を伴う浸潤能の亢進等の転移形質の変化を認めた。この分子機構について詳細な解析を行ったところ、ASCノックダウン細胞では、細胞運動や浸潤突起形成に関与するSrcのリン酸化レベルの上昇が見られた。一方、ASC結合分子の一つであるカスパーゼ8のSrcによるTyr380のリン酸化が細胞運動に関与しているとの報告を基に、ASCノックダウン細胞におけるカスパーゼ8のTyr380のリン酸化レベルを調べたところ、その上昇が見られた。さらに、Src阻害剤、カスパーゼ8阻害剤により、このリン酸化レベルの上昇が抑制されるとともに、ASCノックダウンによる細胞運動の亢進が阻害された。以上の結果から、がん細胞でのASCの発現量低下が、Src-カスパーゼ8経路の活性化を引き起こし、細胞運動能を亢進させるというASCの新たな側面を見出した。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
PLoS One
巻: 12 ページ: e0169340
10.1371/journal.pone.0169340
Cancer Medicine
巻: 5 ページ: 2487-2500
10.1002/cam4.800