ヒト人工染色体(HAC)上にNKX2.1::tdTomatoとNKX2.2::EGFPを連結させたデュアルモニターシステムを構築し(dual-monitor HAC)、ES細胞からNKX2.1陽性を示す内側基底核原基様前駆細胞及びNKX2.2陽性を示す前オリゴデンドロサイト前駆細胞への分化誘導をモニター出来るシステムを完成させた。本モニター用HACベクターを微小核細胞融合法によりマウスES細胞に導入し、HAC保持マウスES細胞株mES/dual-monitor HACを樹立した。このHAC保持マウスES細胞株をSFEBq法によりソニック・ヘッジホッグ(SHH)存在下で神経前駆細胞に分化誘導するとtdTomatoによる赤色蛍光を呈するコロニーが、またSHH/レチノイン酸(RA)処理ではEGFPに由来する緑色蛍光を呈するコロニーが得られることを確認した。さらに、このHAC保持マウスES細胞株にヒト21番染色体全体を再度微小核細胞融合法により導入することにより、ヒト21番染色体を1本余分に持つ細胞株mES/h21/dual-monitor HACを樹立した。このmES/h21/dual-monitor HAC細胞株もSFEBq法により、同様に赤色蛍光、緑色蛍光を呈するコロニーを形成した。ヒト21番染色体を1本余分に持つマウスES細胞は、ヒト21トリソミーのモデルになることは既に我々の研究室で実証しており、mES/h21/dual-monitor HACはヒト21トリソミーにおける内側基底核原基に由来する神経前駆細胞及び前オリゴデンドロサイト前駆細胞の分化能を検証できるモデル細胞となりうる。
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