マウスの各臓器を用いてWWP2のmRNAの発現をRT-PCRにより確認したところ、小腸と大腸においても発現が認められ、大腸での発現量が小腸よりも高いことが分かった。小腸でのin situ hybridaizationの結果、WWP2のmRNAの局在は、腸陰窩部の基底部やその周囲の上皮で強く発現し、上皮細胞が上部に移動するにしたがって発現の低下が認められた。小腸でのWWP2のタンパク質の局在は、mRNAの局在と同じく陰窩基底部に強くみられ、核内と細胞質内に発現が認められた。大腸では、WWP2のmRNAならびにタンパク質は、陰窩基底部から陰窩壁に広く発現が認められ、粘膜表層の上皮で発現が低下していた。細胞内局在に関しては、小腸と同様に核内と細胞質内に発現が認められた。ヒト大腸がん上皮細胞株Caco-2を用いてSox9の発現をノックダウンさせるとWWP2の発現が抑制されていることから、消化管上皮細胞株においてWWP2の発現がSox9により制御されていることが明らかとなった。マウス消化管上皮でのWWP2発現はSox9の発現パターンと同一であることから、Sox9 がWWP2の発現を制御している可能性が示唆された。軟骨形成においてWWP2ユビキチンリガーゼは転写因子Sox9と相互作用し、Sox9の核移行を介して2型コラーゲンの転写活性に関与するが、小腸および大腸における新規の標的遺伝子の同定には至らなかった。WWP2が核内と細胞質内に共に発現し、分化に伴い発現が低下していることから、核内ではSox9の共役分子として、細胞質内ではE3リガーゼとしてタンパク分解に関与することで腸上皮細胞の分化に関与する可能性が推察された。
|