研究課題
平成29年度は、独自に開発した胎児付属物由来抽出物による細胞賦活剤を用いて、異常化した糖尿病モデル骨髄由来MSC(DM-MSC)を賦活化し、糖尿病性腎症(Diabetic nephropathy, 以下DN)に対する治療効果を検討した。ストレプトゾトシン(STZ)誘導I型糖尿病モデルラットおよびOLETF-II型糖尿病モデルラットの両モデルから各々病期の異なるDM-MSCを単離した。STZ由来MSC (STZ-MSC) は、STZ投与後早期から細胞形態の異常を認め、週齢の進行に伴い小胞体ストレス、増殖能、尿細管上皮の再生・修復に関連する各種増殖因子の発現異常が増加した。賦活剤添加により、各病期のDM-MSCの増殖能、ストレスファイバーの過剰発現が改善したが、過剰に添加するとむしろ細胞質が減少し増殖能も低下したことから、賦活剤には阻害因子も含有すると考えられた。一方、OLETF由来MSC (OLETF-MSC)は、STZ-MSCと比較して不均一性が高く、また腎機能障害が未だ軽度な月齢の動物において既に各種の異常を認めた。賦活剤に対しては、より機能低下した細胞の方が細胞形態・増殖能の改善効果が大きかった。賦活化したDM-MSCは、IGF-1の産生やエクソソームの分泌能が上昇した。賦活化したDM-MSCの経静脈的投与による細胞治療は、DNラットの尿中アルブミン排出を減少し、組織学的には尿細管上皮細胞の変性や間質の炎症細胞浸潤・線維化を抑制し、OLETFでは糸球体のメサンギウム基質の増加や基底膜の肥厚の改善効果も認めた。投与した細胞の腎臓への集積・局在の割合は極めて少なく、主に肺・肝臓に集積していたことから、有効性機序としてMSCが分泌するIGF-1やエクソソームによるパラクライン効果が考えられた。
すべて 2017
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Scientific Reports
巻: 7:8484 ページ: 1-17
10.1038/s41598-017-08921-y