研究実績の概要 |
下垂体前葉は成長、生殖、代謝、免疫にかかわる6種類のホルモン(ACTH, GH, PRL, TSH, LH, FSH)を産生する5種類の内分泌細胞と、非ホルモン産生性の濾胞星状細胞より構成される。濾胞星状細胞は古典的ホルモンを分泌しないが、種々のパラクライン因子を介してホルモン産生細胞の細胞機能を制御すると考えられている。しかし、その制御機構は十分には解明されていない。本研究は、これまでに申請者が新規に同定した濾胞星状細胞が産生する分泌因子の機能を明らかにし、前葉内での新たな細胞機能調節機構の解明を目指す。本年度は、機能が未知の8遺伝子(BMP6, FGF18, IL33, Mdk, Penk, Ptn, Wnt5a, Tnfsf13)に注目し、それらの組織内での発現動態を解析することを計画した。まず発現細胞の同定のためにin situ hybridizationによる組織化学的解析をおこなった。着目した8因子すべての遺伝子をRT-PCR法を用いてクローニングした。さらにin vitro transcriptionによりDigラベルしたcRNAプローブ作成を完了した。そのうち、新規ヘパリン結合性成長因子であるミッドカイン(Mdk)とプレイオトロフィン(Ptn)発現細胞をin situ hybridizationにより同定することに成功した。Mdkは胎生の下垂体前葉・後葉原基で強く発現しており、Ptnは後葉原基で発現していることが分かった(Cell Tissue Res. 357:337-44, 2014)。さらに、Mdkは成体下垂体前葉の濾胞星状細胞で発現し、その受容体であるPtprz1はホルモン産生細胞(GH細胞、ACTH細胞)で発現していることが明らかとなり、Mdkは濾胞星状細胞の新たなパラクライン因子としてホルモン産生細胞の細胞機能を調節することが示唆された(Cell Tissue Res. 359:909-14, 2015)。
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