研究課題
本年度は、昨年度に引き続きレチノイン酸の機能解析と、新たな分泌性因子の同定を計画した。これまでに申請者らはレチノイン酸合成酵素であるRALDH1が下垂体前葉内で発現し、前葉内でレチノイン酸が合成され局所で働く可能性を報告してきた。昨年度の研究で、下垂体前葉細胞にレチノイン酸を処理により発現が増加するもしくは抑制される遺伝子を同定した。本年度は、それらレチノイン酸応答遺伝子の中から成長ホルモン産生細胞の機能に関わる成長ホルモン放出ホルモン受容体(Ghrh-r)とグレリン受容体(Ghs-r)の遺伝子発現に対するレチノイン酸の効果を解析した。その結果、レチノイン酸はレチノイン酸受容体(RARとRXR)を介して、それら遺伝子発現を促進することが分かった。更に、ラット下垂体前葉初代培養細胞を用いて、Ghrh-rとGhs-rのそれぞれのリガンドであるGHRHとグレリンによる成長ホルモン分泌におけるレチノイン酸の効果を検討した。その結果、レチノイン酸はGHRHやグレリンによる成長ホルモン促進作用を増強することが分かった。一方、ラット下垂体前葉で成長因子の一つである骨形成タンパク質6(BMP6)が発現していることを見出した。In situ hybridization法により前葉内の濾胞星状細胞の一部がBMP6 mRNAを発現していた。リアルタイムPCR法を用いて前葉におけるBMP受容体発現を解析したところ、I型受容体ではAcvr1とBmpr1aが、II型受容体ではAcvr2aとBmpr2が主に発現していることが分かった。更に、単離したラット下垂体前葉細胞の初代培養細胞にBMP6を処理すると、BMP受容体のシグナル分子であるSMADがリン酸化されて核内に移行することが分かった。これらのことからBMP6は前葉内の新たなパラクライン因子として働く可能性が考えられた。現在、その機能解析を進めている。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 5件、 招待講演 3件)
Endocrine Journal
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