研究課題/領域番号 |
26460282
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
松本 英子 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (00312257)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 走査電子顕微鏡 / 大脳皮質ニューロン / 糸状仮足 / ネトリン-1 / 軸索ガイダンス |
研究実績の概要 |
本研究では大気圧走査電子顕微鏡 (Atmospheric scanning electron microscope; ASEM) と呼ばれる新型の電子顕微鏡により、培養ニューロンにみられる種々の微細構造を観察するための技法を確立することを目指す。ASEMでは、電子線を通す窒化シリコン製耐圧薄膜を備えた専用ディッシュを利用して、大気圧下においた試料の観察を行う (Nishiyama et al. (2010) J. Struct. Biol. 169, 438-449)。旧来の走査電子顕微鏡に必要とされる試料の前処理が不要であり、簡便かつアーティファクトの少ない状態で観察ができることなど多くの利点があるが、生物学・生命科学分野における活用例は未だ少数であった。 近年我々は軸索ガイダンス因子ネトリン-1が大脳皮質ニューロンで示す作用に関する研究に取り組んでおり、その中でも特に大脳皮質ニューロン軸索において、シャフト上の糸状仮足生成に端を発する分枝形成の促進作用に注目している。本研究ではASEM用の薄膜ディッシュ上において、ポリ-D-リジンによるコーティングの利用により、マウス胎仔・ハムスター新生仔の大脳皮質に由来するニューロンの初代分散培養を行う方法をまず確立した。薄膜ディッシュ上で5日間の培養を行ったニューロンに、グルタルアルデヒドによる固定とリンタングステン酸による染色を施した試料を用いると、ASEM画像が取得できた。この方法を利用し、胎生16日 (E16) マウス大脳皮質由来の培養ニューロンにおいて、軸索ガイダンス因子ネトリン-1による刺激に反応して軸索シャフトに生じた多数の糸状仮足をASEMにより観察した。またASEMに適した退色防止剤を探索する目的で、各種抗酸化剤について電子線照射によるダメージを抑制する効果の評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度にあたる平成26年度は当初の研究実施計画に沿って、まずマウス胎仔・ハムスター新生仔大脳皮質由来の初代分散培養ニューロンをASEM専用薄膜ディッシュ上で培養する方法を確立した。次いで、一般染色法としてリンタングステン酸染色を行った試料を用いることにより、培養ニューロンのASEM画像が得られることを確認した。またASEM撮像時に用いる退色防止剤の探索も実施した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに蛍光ナノゴールド標識二次抗体を用いた免疫ASEM法が報告されている。この方法で得られたシグナルはASEMでも蛍光顕微鏡でも検出できるが、ASEM画像上のシグナルはドットの連なり・集まりとして現れるという特徴をもち、これは目的とする構造の大きさや形状によっては欠点となりうる。本研究では上記方法を大脳皮質ニューロンに適用する試みに加え、元来の構造をより良く反映した免疫染色法を追究する目的で、ペルオキシダーゼ標識二次抗体を用いた免疫ASEM法の確立にも取り組む計画である。 第一に軸索マーカータンパク質に対する抗体を用いた免疫ASEMを実施する。これまではリンタングステン酸染色を用いて観察してきた、E16ニューロン軸索シャフト上にネトリン-1依存的に生ずる糸状仮足の免疫ASEM画像を取得し、各技法の有用性について検討する。第二にネトリン受容体DCC (deleted in colorectal cancer) に対する抗体を用いた染色を試み、過去に我々が蛍光顕微鏡観察により見いだした、リガンド依存的・エキソサイトーシス依存的に細胞表面に形成されるDCCクラスターについて、ASEMによる可視化を目指す。 ペルオキシダーゼ標識二次抗体による免疫ASEM法を確立できれば、二種の一次抗体について、一方に蛍光ナノゴールド標識二次抗体、他方にペルオキシダーゼ標識二次抗体を用いた二重免疫ASEM法が可能となる。またナノゴールド粒子径/蛍光色素の異なった蛍光ナノゴールド標識二次抗体を用いることによっても、二重 (多重) 免疫ASEM法が可能であるものと考えられる。これらの方法により、上記DCCクラスターと、細胞膜に存在するエキソサイトーシスのマシナリーとして知られる各種 t-SNARE (Q-SNARE) タンパク質との共局在の程度を調べる計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
培養ニューロンの観察に用いている倒立顕微鏡画像取得・解析システムに老朽化による欠陥が発生したため、当初の使用計画に変更を加え研究費の一部を上記システムの更新費用に充当した。この変更の結果、少額ながら次年度使用額が生じることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額と平成27年度新規請求分とを合わせた研究費のうち約18%を用いて、先に述べた倒立顕微鏡システムに関わる今回の更新を完遂する予定である。残りの額は当初の計画に挙げた使途、すなわち、培養ニューロンの大気圧走査電子顕微鏡画像取得に掛かる費用と、これに適した各種染色法を探るために光学顕微鏡を用いて行う予備実験 (*上記の倒立顕微鏡一式を使用予定) のための実験動物・試薬・消耗品類購入に掛かる費用、ならびに研究成果の公表に掛かる費用に充てる計画である。
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