研究実績の概要 |
ヒト食道の重層扁平上皮癌由来の細胞株TE-1, TE-8, TE-11のタイト結合蛋白発現をウエスタンブロットで調べると、TE-11はZO-1, occludin, cldn-1, -4, -7の全てを発現し、TE-1はcldn-1の発現がなく、TE-8は全ての発現がなかった。E-cadherinについては、TE-1, -8, -11全てで発現がみられた。参考とした論文(Lioni et al, 2007)では、TE-8細胞はE-cadherinを発現しないとされていたが、実際には発現されていたので、E-cadherinをTE-8細胞に発現する実験は中止した。 AcGFP を付与したcldn-1, cldn-4, cldn-7 の cDNA、すなわちAcGFP-cldn-1, AcGFP-cldn-4, AcGFP-cldn-7を作成して、ドキシサイクリン(dox) による発現制御ベクターであるpTRE2hygベクターに挿入し、発現ベクターを構築した。これらを、pTet-On vectorとともにTE-8細胞にコトランスフェクションし、dox制御下にAcGFP-cldn-1, -4, -7を安定に発現する細胞をハイグロマイシンとG-418で薬剤選択して樹立を試みた。cldn-1, cldn-4, cldn-7を安定に発現するTE-8細胞を得る事ができたが、cldn-4についてはdox制御が不十分であるために、現在再作成を行っている所である。
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今後の研究の推進方策 |
以下により、正常重層扁平上皮層内部での癌細胞の浸潤性、分化度、細胞間接着、生存率を調べるための実験条件を確定する。 1.正常ケラチノサイトの三次元培養での重層化に要する日数を検討する。重層化の経過を0~21 日の期間で調べ、解析を行うのに十分な重層化が得られる日数を確定する。 2.癌細胞(TE-8-AcGFP-cldn-1, TE-8-AcGFP-cldn-4, TE-8-AcGFP-cldn-7)と正常ケラチノサイトとの混合比率を検討する。癌細胞と正常細胞を混合する比率を1:1, 1:2, 1:5, 1:10, 1:20, 1:50 で検討し、癌細胞の動態を観察しやすい比率を確定する。 3.正常細胞と癌細胞の混合培養における導入遺伝子発現のタイミングと期間を検討する。①細胞をまきこむ時からdox (-)またはdox (+)として3, 7, 14, 21 日後に観察する。②dox (+)で細胞をまきこみ、十分に重層化した後にdox (-)として0, 1, 3, 7, 14 日後に観察する。③dox (-)で細胞をまきこみ、十分に重層化した後にdox (+)として0, 1, 3, 7, 14 日後に観察する。
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