研究実績の概要 |
ヒト食道の重層扁平上皮癌由来の細胞株TE-1(E-cadherin, cldn-7を発現しcldn-1, cldn-4は発現しない), TE-8(すべてを発現しない), TE-11細胞(すべてを発現する)で、TE-8細胞にcldn-7を発現するとE-cadを発現するようになり細胞の浸潤性が低下したが、TE-8細胞にE-cadherinを発現してもcldn-7は発現しなかった(Lioni et al, 2007)。本研究は、この結果を生体に近い三次元培養系で検証することを目的としたが、ウェスタンブロッティングでTE-8細胞がE-cadherinを発現していた。さらに免疫染色でも細胞間にE-cadherinが局在した。そこで、研究をケラチノサイトの三次元培養系の確立に変更した。ヒト初代培養ケラチノサイトをセルカルチャーインサートのポリカーボネート膜に直接播種し、成分が既知のEpiLife培地にカルシウム、アスコルビン酸、keratinocyte growth factor (KGF)を添加し、気液界面培養により角化重層扁平上皮を再構築できた(平成27年度)。さらに、本年度は、マウスのケラチノサイト細胞株であるCOCA細胞(CnT-PR培地で培養)とK38細胞(FAD培地で培養)を使って、同様の方法でそれぞれ角化および非角化重層扁平上皮を再構築できた。また、COCA細胞およびK38細胞を使って3週間後に再構築された重層構造において、タイト結合形成の指標となる細胞間電気抵抗値がそれぞれ463Ω・cm2、63Ω・cm2であった。今回確立したマウス三次元培養系は、角化および非角化重層扁平上皮におけるタイト結合の形成や機能を調べる上で有用な実験系である。
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