研究課題/領域番号 |
26460287
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
野津 司 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (30312367)
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研究分担者 |
奥村 利勝 旭川医科大学, 医学部, 教授 (60281903)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | LPS / サイトカイン / CRF / 内臓知覚 |
研究実績の概要 |
LPSを投与するとラットで内臓知覚過敏が誘導され,これはIL-1受容体拮抗薬のアナキンラ,IL-6抗体の投与により阻止された.またこの反応は非選択的CRF受容体拮抗薬アストレシンで阻止されたが,CRF2選択的受容体拮抗薬の投与では変化を示さなかった.さらにCRF1受容体アゴニストcortagineの投与により反応が増強し,CRF2受容体アゴニストurocortin IIの投与で抑制された.これらの結果は,LPSによる内臓知覚過敏は,IL-1,IL-6,末梢CRF受容体を介する反応であることを示している.IBS患者では血中LPS,サイトカイン濃度の上昇し,さらにLPSに対するマクロファージからのサイトカイン産生能が亢進しており,これはIBSの症状重症度と相関することが報告されている.以上より,LPS-サイトカイン系はIBSの内臓知覚過敏に関与しており,末梢CRF受容体はこの反応をメディエートしており,それは我々の以前の報告のとおり,CRF1とCRF2の信号バランスによって制御されているものと考えられた.本研究はJournal of Gastroenterologyに掲載済みである.Water avoidance stress(WAS)は古典的な精神的ストレスモデルであるが,慢性WASによって誘導される内臓知覚過敏は,IBSの動物実験モデルと考えられている.我々は連続3日,1時間/日のWASによって内臓知覚過敏が誘導されることをラットで確認し,この反応は,LPSと共通の機序つまり,末梢CRF,IL-1,I-6を介することを明らかにした.これは前記の論文の結果と併せて,CRF-LPS-サイトカイン系が,IBSの病態に深く関わっていることを示唆する.この仕事もJournal of Gastroenterology and Hepatologyに採択済みである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
IBSのストレスモデルとして,今年度は上記のように2つのモデルを確立することができた.また,それぞれのモデルでCRFの関連性を明らかにすることができた.また双方のモデルで共通する機序,CRF-LPS-サイトカイン系の存在を報告することができた.これらは直ちに論文として,国際ジャーナルに投稿,採択され成果を公に示している.さらに成果の一部は2017年3月に行われた,アジア神経消化器病学会で発表を行っている.
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今後の研究の推進方策 |
上記の結果を受け,ストレスによりCRF受容体が活性化され,その結果腸管透過性の亢進が起きてbacterial translocationが誘導される.その結果LPSが遊離してサイトカイン産生が促進し,内臓知覚過敏が誘導されるという仮説が考えられる.この仮説を確かめるために,内臓知覚とともに今後は腸管透過性の測定も行い実験を進める予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では必要とされた実験器具(特にコンピュータ関連)を購入しなくても,実験の遂行が可能であることがわかり,購入していないことがその理由である.また論文校閲に関わる経費も,自己努力により英語論文作成スキルが向上したので,不必要になった.
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次年度使用額の使用計画 |
当初の実験計画から,様々な予期せぬ新しい知見が得られるようになり,新しい実験が新たな計画の元に行われている.このような研究の新展開に,経費を臨機応変に使用する予定である.
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