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2014 年度 実施状況報告書

心筋の不均一収縮に起因する局所的な活性酸素の産生が不整脈の発生に果たす役割の解明

研究課題

研究課題/領域番号 26460288
研究機関東北大学

研究代表者

三浦 昌人  東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30302110)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード活性酸素 / 細胞内カルシウム / 不整脈
研究実績の概要

病的心筋においては活性酸素の産生が報告されているものの、不均一収縮心筋において活性酸素がどのように分布するのか、その分布の変化がどのように不整脈の発生に関与するのかは知られていない。そこで、不均一収縮心筋における活性酸素の分布をラット多細胞心室筋において観察した。ラット右心室より多細胞心室筋であるトラベクラを摘出した。張力は力トランスデューサーで、サルコメア長はレーザー回折法で、膜電位は微小電極法で、細胞内カルシウムはカルシウム蛍光色素であるフラ2を用いて記録した。活性酸素の産生は2’,7’-dichlorofluorescein(DCF)蛍光を用いて行った。カルシウム波の誘発には0.4秒間隔7.5秒間の電気刺激を、不整脈の誘発とDCF蛍光の測定には0.25秒間隔30秒間の電気刺激を行った。不均一収縮心筋モデルを作成するために、ミオシンATPase活性阻害薬であるbutane dione monoxime(BDM、20mM)あるいは0.2mMの低カルシウム液を心筋局所領域に潅流した。BDM液と低カルシウム液の局所潅流による不均一収縮心筋では、0.25秒間隔30秒間の電気刺激直後にDCF蛍光は局所潅流領域において低下し、電気刺激停止5秒以降にこのDCF蛍光の低下は消失した。NADPH oxidase阻害薬であるdiphenyleneiodonium (DPI)の前処置により、DCF蛍光の局所的低下は消失した。次に、0.4秒間隔7.5秒間の電気刺激によってカルシウム波は局所潅流の境界領域から発生し、その伝播速度はDPIの前処置によって低下した。0.25秒間隔30秒間の電気刺激によって誘発される不整脈の数はDPIの前処置によって減少した。以上より、不均一収縮心筋では電気刺激によって主に収縮領域において活性酸素が産生される。この活性酸素が伸展領域からの解離カルシウムによる筋小胞体のカルシウム放出を増幅することにより、結果として境界領域からカルシウム波を発生させ、催不整脈性の亢進をもたらすと考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は、不均一収縮に起因する活性酸素の産生部位の特定を目指している。不均一収縮心筋モデルにおいて、潅流域が収縮期において受動的に伸展されていることを確認した後、非潅流域である収縮領域における局所的なDCF蛍光の増加を記録した。更に、DPIの前処置後のDCF蛍光を記録することにより、この収縮領域におけるDCF蛍光の増加が、不均一収縮に起因する活性酸素の産生を反映していることを既に明らかにした。

今後の研究の推進方策

不均一収縮心筋モデルにおいては、収縮期の受動的な伸展に引き続いた弛緩期の短縮によって収縮蛋白からカルシウム解離が起こり、この解離カルシウムがカルシウム波を誘発する。活性酸素は筋小胞体からのカルシウム放出を促進することが報告されているため、受動的な伸展による局所的な活性酸素の産生が、カルシウム波の伝播を促進するかどうか、撃発性不整脈の発生と持続に影響するかどうかを明らかにする。更に、過酸化水素の局所潅流によって、不均一収縮時と同じような現象が認められるかどうかを明らかにする。
(1)活性酸素の産生とカルシウム波伝播、不整脈発生との関係。カルシウム感受性蛍光色素であるフラ2を負荷した心筋に、dichlorodihydrofluorescein(DCFH)を負荷する。この方法によって活性酸素の産生と細胞内カルシウム濃度を連続的に記録し、不均一収縮心筋における活性酸素の産生とカルシウム波伝播速度、不整脈の発生、持続及び頻拍周期との関係を明らかにする。
(2)催不整脈性の経時的変化における活性酸素の役割。30秒以上持続した不整脈の停止後、一定の時間間隔をおいて再び不整脈を誘発し、不整脈の誘発と活性酸素の産生量の経時的変化を記録する。これにより、不整脈停止後の催不整脈性における活性酸素の産生量の役割を明らかにする。
(3)過酸化水素の心筋局所潅流によるカルシウム波と不整脈の誘発。BDMの代わりに過酸化水素を含む溶液を心筋の局所領域に潅流し、不均一収縮モデルで誘発されるカルシウム波、不整脈と比較する。更に、心筋全体を過酸化水素で潅流する場合と比較することにより、局所的な活性酸素の上昇が与える影響を明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

例年3月に開催される日本循環器学会が2015年3月ではなく、2015年4月に大阪で開催される。そのための旅費と学会参加費として2014年度分の旅費用の経費を次年度に繰り越した。

次年度使用額の使用計画

研究成果を大阪で開催される日本循環器学会で発表するための、交通費と宿泊費、更には学会参加費として使用することとする。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2015 2014

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] 1.Effect of high glucose on arrhythmia susceptibility in rat myocardium with nonuniform contraction2015

    • 著者名/発表者名
      Tetsuya Handoh, Masahito Miura, Yuhto Taguchi, Chiyohiko Shindoh.
    • 学会等名
      第79回日本循環器学会
    • 発表場所
      大阪、大阪国際会議場
    • 年月日
      2015-04-24 – 2015-04-24
  • [学会発表] Regional ROS production causes Ca2+ waves in the myocardium with nonuniform contraction2014

    • 著者名/発表者名
      Yuhto Taguchi, Masahito Miura, Yuka Kato, Tetsuya Hando, Mai Sasaki, Chiyohiko Shindoh
    • 学会等名
      87th AHA meeting
    • 発表場所
      マコーミックプレイス、米国
    • 年月日
      2014-11-16 – 2014-11-16

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公開日: 2016-05-27  

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