研究課題
研究代表者らは、ラットにおいて多細胞心室筋(トラベクラ)不均一収縮モデルを既に確立している。しかし、遺伝子組み換え動物の多くはマウスを用いたものであり、NADPH oxidase 2(NOX2)ノックアウトマウスなどは、本研究課題の解明にも有用である。しかし、マウスでの不均一収縮モデルは未だ確立しておらず、しかも実験に使用可能なトラベクラは10匹に1個程度であると報告されている。そこで、ICRマウスを用いてマウス・トラベクラの不均一収縮心筋モデルの確立を試みた。48匹のマウスで26個のトラベクラが摘出可能であり、12個のトラベクラで張力と細胞内カルシウムの測定が可能であった。細胞外カルシウム濃度を0.2から4mmol/Lに増加させることにより、電気刺激による発生張力、収縮・弛緩速度が増加し、細胞内ピークカルシウムも増加した。イソプロテレノールの投与によっても同様の変化が認められた。温度を25度から15度へ低下させることにより、電気刺激による発生張力は増加したのに対し、収縮・弛緩速度は変化しなかった。butane dione monoxime(BDM)のジェットにより、不均一収縮が発生し、電気刺激によってその領域からカルシウム波が誘発された。カルシウム波の伝播速度は0.5から4mm/s程度でラットにおいて誘発されたカルシウム波とほぼ同様であった。以上より、マウスにおいて多細胞心室筋不均一収縮モデルを確立した。今後はNOX2ノックアウトマウスなどの遺伝子組み換えマウスを用いて、活性酸素が不整脈の発生に与える影響を明らかにする予定である。
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Circ J
巻: 80 ページ: 76-84
10.1253/circj.CJ-15-0401