研究課題/領域番号 |
26460294
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
櫻井 孝司 豊橋技術科学大学, エレクトロニクス先端融合研究所, 特任准教授 (50283362)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | インスリン / 抗体 / 光ファイバ / フォトマル |
研究実績の概要 |
本年度は、研究計画において構築する装置のコア部を成す光化学イメージ素子に抗体を配置し、インスリンの特異的検出をおこなう分子選択層の形成、計測原理確認、ならびに性能検証を行った。 光化学イメージ素子は1~5万画素(画素ピッチ約3.3ミクロン)の合成石英またはプラスチック光ファイバを採用、インスリン抗体はアビジンビオチン結合を利用して素子上へ直接配置した。抗体へのインスリン結合はペルオキシダーゼ標識2次抗体を用いて基質追加により発生する光をファイバで導波させた後でフォトマルチプライヤ検出により計測した。 イメージ素子を含む計測用チャンバ内へ既知濃度のインスリン含有液を添加した後、微弱光量の経時変化を計測したところ、抗原量に依存した増大をインスリン溶液追加直後から確認できた。増大光量の1分間での平均値とインスリン濃度の相関性を解析した結果、フォトマルチプライヤのノイズレベル(50 cpm)に相当する最小検出限界は10(-9)M以下で原理的に達成可能なことが確認できた。光ファイバ長を1000 mmとした場合、最小検出限界は、合成石英製がプラスチック製より3倍以上良好だった。合成石英を用いたインスリン依存性の微弱光計測は、直径0.6ミリ角の計測エリアで、毎秒3フレーム以上、連続1時間以上実施できた。 以上の結果より、細胞外へ放出されたインスリンを検出する光化学イメージ素子の構築、原理確認ならびにインスリン濃度に依存した光計測が実証できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はインスリン量に依存した発光量を計測する光化学センサ装置の開発に着手し、センサ装置の構築と性能検証を行ったところ、いずれも当初の計画通り、原理検証を達成できたと判断した。 光化学イメージ素子へのインスリン選択層の構築、採用するイメージ素子の仕様はおおむね研究計画通り遂行できた。インスリンの検収感度は中間目標値(10(-9)M以下)が達成でき、所期した時空間性能(計測エリア、画素ピッチ、フレームレート)を満たせた。イメージ素子としてファイバ型を適用できたため、生体での計測適用への見通しも立った。 検出の特異性と感度の向上は、中途となったが、比較計測や抗体の高密度配置などを行うための光計測装置の高度化、ならびに材料選定といった予備試験は完了している。
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今後の研究の推進方策 |
インスリンセンシングの時空間性能、ならびに感度の向上を行い、細胞機能計測にむけて実用性を向上させる。 空間性能は、素子の多画素化で向上させる。画素数5万以上、検出範囲は1ミリ角と向上させた光ファイバを採用する。26年度に開発した抗体の設置条件を多画素型へも反映させ、膵組織から放出されるインスリンを計測するために必要な時空間性能を満たす。感度は抗体配置の最適化を伴って、最終目標値(10(-12)M以下)の達成を目指す。 細胞機能計測は、実験動物を用い、in vitroとin vivoで実施する。標準標本として、INS1細胞(ラットインスリノーマ由来の細胞株)とマウス等を予定している。インスリン計測を行う際、その間接的な証明を行うために、蛍光顕微鏡装置も一体化させる。27年度における中間目標値は、座標はセンサ各画素ピッチ以内のずれ、時間は100ミリ秒以下の誤差での、同時計測の実現とする。
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