研究課題
我々はTRPC3/6/7チャネル群における脂質制御の研究を行った結果、PI(4,5)P2(PIP2)―ジアシルグリセロール(DAG)による自己制御機構の存在を明らかにした。しかしその分子機構の詳細については多くの点で不明である。本年度、PI(4,5)P2 結合部位の同定とFSGS変異体におけるPI(4,5)P2制御の関連性について検討を行った。過去の報告においてPIP2の作用点が何処にあるか、統一的な見解は出ていない。 そこでTRPC6チャネルサブユニットの塩基性アミノ酸、約30か所程度において変異体を作成した。その後、PIP2に対する機能的結合定数の違いを求める実験を行った。電位依存的に一過的にPIP2を分解する電位作動性酵素VSPを用いた。その結果、今まで報告のなかった重要な領域を新たに同定することができた。この領域は最近報告された、TRPV1チャネルの分子構造と比較したところ、構造を機能的に説明する上でも、理に適っているものと考えられた。一方、TRPC6チャネルはネフローゼ症候群の一つであり家族性糸球体硬化症(FSGS)の原因遺伝子としての報告もなされている。このため、FSGS変異体におけるPIP2との関連性について検討を加えたところ、興味深いことに多くのFSGS変異体でPIP2に対する親和性が有意に減弱していることを見出した。これらの結果は、TRPC6に変異が生じることでPIP2―DAGによる自己制御機構の変動と病態発症が繋がる可能性を示唆する。
2: おおむね順調に進展している
本年度の当初の目的をほぼ達成できた。新たなPIP2の結合部位を同定できた点は非常に大きいと思われる。更にFSGS症候群で見られる変異体において、PIP2結合が有意に減弱していることを見出せた点は、新たな方向性として興味深い。これらの結果は予備的であることから論文には掲載していないが、代わりにシュミレーションの結果を示した論文などを発表した。しかし、更に追求すべき点がいくつも出てきていることから、概して順調に進展しているが、一層の追及も必要である。
前年度において、TRPC6チャネルにはPIP2感受性の成分と非感受性の成分の存在が明らかとなった。一般的にアゴニストによる受容体刺激の強さや種類によってPIP2の存在量が変動することが知られていることから、TRPCチャネルの機能が受容体の刺激如何で変動する可能性が示唆された。新たな目標として一つにはPIP2感受性と非感受性成分の違いについて電気生理的に検討する必要があると考えている。I-Vcurve,Single channel レベルでの解析、更にはPermealibilityについて実験を行いたい。また、計画通り、細胞内カルシウムとPIP2の関連性について検討も行う。PIP2の作用はこれまで同様、VSPを用いたPIP2急性枯渇実験も行うなどにより、TRPC6チャネルの応答性について検討を加える。
研究が進行していく途中で、新たな目的が浮かび上がってきた。このため、研究計画を若干修正しながらすすめる必要があったため。
研究計画の修正が済み次第、早急に前年度買えなかった物品の購入に当てる。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (4件)
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