研究課題
目的:神経、平滑筋等に多く発現しているTRPC(Transient Receptor Potential Canonical)蛋白質群は非選択的カチオンチャネルを形成し、種々の細胞においてカルシウム動員や電気的興奮に関与することが知られている。TRPCチャネルは受容体刺激に伴うイノシトール代謝の活性化に応じて開口するが、未だその分子的活性化機構については多くの点で不明である。本研究ではこのイオンチャネル群のイノシトールリン脂質の作用点を明らかにし、その作用点変異体を用いることで、作動原理を探るとともにその制御の生理的意義について検討を深めることを目的としている。(方法:これまでの研究からイノシトールリン脂質(PIP2)の作用点を見出した。該当年度においては、電気生理学的な機能解析をHEK293細胞並びに副腎由来PC12細胞を行いった。更にはSingle channelレベルでの詳細な解析、共焦点顕微鏡等を用いた細胞内局在の解析等を行った。結果:PIP2作用部位は膜貫通領域近傍のPre-S1に存在していることが変異体における研究から明らかとなった。これらの変異体では電流密度の減少のみならず、活性化時間の遅延が観察された。またSinglechannelレベルの解析により開口確立の減少、コンダクタンスの小さい成分が増えること、更には細胞膜輸送においても多少の抑制が働くことなどを新たに見出した。以上、PIP2の作用点について新たに今まで殆ど報告がないPre-S1ドメインの機能的重要性を見出すことが出来た。
2: おおむね順調に進展している
PIP2作用点に変異を入れることで生じる結果が概ね明らかになったことは全体の見通しがついたと言えよう。特にHEK293細胞のみならずPC12細胞のような神経由来細胞においても同様の結果が得られている点が良かった。しかしながら、細胞内カルシウムとの関連性については幾つかの結果が得られつつあるが未だ明確ではない。
TRPチャネルはその多くにおいて未だ活性化機構は不明である。細胞に普遍的に存在しているPIP2制御との関連性を詳細に探索することはその本質的な原理機構に迫るものと考えている。今後は特にPIP2作用について生理機能との関連性を中心に特に神経細胞において観察されるゆっくりとしたシナプス後膜電位(SlowEPSP)にTRPCチャネル群が関与しているとの報告がある。SlowEPSPにTRPCチャネルが与える影響について中心的に研究を推進していく。
TRPC6チャネルにおけるPIP2作用部位について検討を行っていく過程で、予測していたより早く最初の目的がクリアできたことによる修正が原因のひとつである。しかし生化学的な解析、動物実験はまだ不十分である。これらの実験は多くの物品費、経費を必要とする。
早い段階で、生化学実験や電気生理を用いた動物(ラット)などの個体を用いた実験の準備を進める予定である。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Mol Pharmacol.
巻: 89 ページ: 348-363
Channels
巻: 10 ページ: 14-19
doi: 10.1080/19336950.2015.1051271
Cell Calcium
巻: 58 ページ: 296-306
10.1016/j.ceca.2015.06.007.