研究課題
昨年度に引き続きTRPCイオンチャネルの作動原理を探る目的で、PIP2に対する応答性を各種変異体を用いて検討した。その結果、C末のTRPboxの下流にある領域に変異を導入するとPIP2に対する応答の方向性(ポラリティー)が反転する変異体を見出した。30種近くあるTRPチャネル群の活性化機構においてPIP2の増減が重要であることは知られている。しかし活性化メカニズムに至っていないものが多い。そこで、この発見を下にポラリティースイッチドメインに関する詳細な検討を行った。PKAやPKC、JAK2の影響を確認したところ、多少の変化は及ぼすが、ポラリティーが反転するほど効果は得られなかった。一方、プロリン残基の影響について検討したところ、プロリン残基は極めて重要なスイッチとして働いていることを見出した。今後PIP2の応答性の変化が生理的にどのような意義があるのか検討するうえで、新たな知見が得られたと考えている。また、Ca2+が受容体刺激により活性化されるTRPCチャネルのPIP2感受性に与える影響を検討した。その結果Ca2+をイオンキャリアとして用いると、TRPC6チャネルはBa2+の時に時に比べ、PIP2に対する親和性が強くなることが観察された。このことからPIP2は細胞内カルシウムが上昇しても、イオンチャネルの活性を維持する機能を十分保持していることが示唆された。これに加え、生理的な状況においてPIP2とTRPC6電流の同時測定を行ったところ、PIP2の減衰はそれほど大きくないことが明らかとなった。これらのことから、生理的状況で観察される早いTRPC6の不活性化には、Ca2+依存的な経路の重要性が明らかとなってきた。
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J Physiol.
巻: 595 ページ: 2465-2477
10.1113/JP273736