研究課題/領域番号 |
26460298
|
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
冨田 江一 高知大学, 教育研究部 医療学系, 准教授 (80314285)
|
研究分担者 |
由利 和也 高知大学, 医歯学系, 教授 (10220534)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 眼優位カラム / 機能ユニット / 初期形成メカニズム / 可塑的発達メカニズム / シャペロン |
研究実績の概要 |
視覚系の発達した哺乳類の第一次視覚野では、同側・反対側眼から視覚入力を受ける神経細胞は各々グループ化して「同側・反対側眼優位カラム」を構築する。眼優位カラムは、発生期に制御因子により大まかに同側・反対側眼優位カラムに分けられたのち(初期形成プロセス)、発達期になり視覚刺激に促され完全に分離する(可塑的発達プロセス)という、2プロセスを経て形成される。本研究では、前者の初期形成プロセスに注目した。このプロセスでは、個々の幼弱神経細胞が同側・反対側眼優位性を獲得する事象と、各々の眼優位細胞群がそれぞれ同側・反対側眼優位カラムとしてグループ化する事象の2つが進行している。本研究では、研究代表者が独自に単離した「同側眼優位カラム特異的シャペロン」を用いて、2事象が共通のメカニズムによって制御されているのか、あるいはそれぞれ別個のメカニズムによって制御されているのか検討した。 平成26年度は、組織学的な検証を行った。同シャペロンの発現パターンを指標に、同側・反対側眼優位性を獲得した幼弱神経細胞がそれぞれ発生初期からグループ化しているか検討した。発生初期よりカラム状にグループ化している場合には上述の2事象は共通のメカニズムにより制御されており、そうでない場合には2事象はそれぞれ別のメカニズムにより制御されていると予想される。 実際には、第一次視覚野の幼弱神経細胞が眼優位性を獲得する出生後1日目(P1)とP3・P5・P7・P10のネコの第一次視覚野における同シャペロンの脳表面に平行な2次元発現マップをin situ hybridization法にて検出した。結果、発生初期からシャペロンを発現する同側眼優位カラム細胞群と発現しない反対側眼優位カラム細胞群はそれぞれグループ化していることが分かった。つまり、上記2事象は共通のメカニズムにより制御されている可能性が高いと組織学的に証明できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
眼優位カラムは、発生期の初期形成プロセスと発達期の可塑的発達プロセスを経て形成される。本研究では、特に前者の初期形成プロセスに注目した。このプロセスで進行している、個々の幼弱神経細胞が同側・反対側眼優位性を獲得する事象と、各々の眼優位細胞群がそれぞれ同側・反対側眼優位カラムとしてグループ化する事象の2つが共通のメカニズムによって制御されているのか、あるいはそれぞれ別個のメカニズムによって制御されているのか検討した。 平成26年度は、特に組織学的レベルでの検証を行い、「研究実績の概要」の項目に記載したように、これら2事象は共通のメカニズムにより制御されている可能性が高いことが証明できたわけである。これは、「交付申請書:平成26年度の研究実施計画」に記載した内容とほぼ同じであり、現在までの達成度は「区分(2) おおむね順調に進展している」に相当すると考えた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、第一に「研究実績の概要」の項目に記載した組織学的解析の結果を、統計学的手法によって客観的かつ詳細に検証後、論文発表したい。続けて、「交付申請書」に記載したように、以下の解析を順に進める予定である。 I. 発生工学的手法による解析「第一次視覚野でシャペロンを発現する遺伝子改変マウスの作成」:発生初期に、マウス第一次視覚野領域で同側眼優位カラム特異的シャペロンを過剰発現する遺伝子改変マウスをトランスジェニックマウス法あるいはエレクトロポレーション法にて作成する。 II. 発生工学的手法による解析の続き「同側眼優位性神経細胞や同側眼優位カラムの検出」:上述の遺伝子改変マウスの第一次視覚野内で、同側眼優位細胞が増えたかまたは眼優位カラムが形成されたかを、Arc/BDNF induction法により検討する。この方法では、短時間同側眼を光刺激して同側眼優位性神経細胞や同側眼優位カラムにArcやBDNFの発現を誘導し、それらの発現を組織学的手法にて検出することで、光刺激された同側眼優位性神経細胞や同側眼優位カラムの可視化が可能となる。 III. 発生工学的手法による解析の続き「視覚認知能力の検証」:上記マウスにおいて同側眼優位細胞の増加または眼優位カラムが認められた場合、遠近感の認知(両眼視)能力が向上していると予想されるため、その可能性を視覚の鋭敏性を調べる行動学的テストを用いて検証する。最終的に、視覚の鋭敏性が高いほど、遠近感の認知能力が向上していると考える。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、組織学的解析が主となり、予想された消耗品の経費使用額が減少した。さらに購入備品(実体顕微鏡)の装備品が当初より削減可能であった。これによって未執行額が発生した。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、DNAベクターを調整し、そのベクターを用いてトランスジェニックマウス法あるいはエレクトロポレーション法により遺伝子改変マウスを作成予定である。DNAベクターの調整時には、多量かつ頻回の核酸抽出が必須となるため、当該年度に自動核酸抽出器を購入予定である。
|