ヘミチャネルであるパネキシン1(Panx1)は、静水圧や低浸透圧などの機械的な刺激で活性化され、細胞外へのATPの放出に深く関わっていると考えられている。しかしながら、Panx1の生理的な役割や機械刺激に対するチャネルの活性化機構についての詳細は未解明のままである。本研究の目的は、機械刺激に対してどのようにPanx1チャネルが活性化されるのかを明らかにすることである。これまでの研究において、Panx1チャネルは膜貫通領域に電荷を持ったアミノ酸残基が存在しないにも関わらず、膜電位の変化に対して電位依存的なチャネル活性を示したことを報告した。このことは、機械刺激に対するチャネル活性との判別が困難であることを示しており、平成28年度は膜電位の変化に対するPanx1チャネルの単一イオンチャネルゲーティングのキネティクス解析に焦点を置いて検討を行った。その結果、単一イオンチャネルコンダクタンスは内向き電流では約20 pSおよび外向き電流では約80 pSという外向き整流性を示し、単一イオンチャネル開閉速度の膜電位依存性は逆転電位を境にして過分極側および脱分極側で著しく異なることが示唆された。これらのことより、「charge carrierの移動方向および単位時間あたりの移動量が単一イオンチャネル開閉速度の膜電位依存性を制御している」という可能性を見出した。
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