研究課題/領域番号 |
26460302
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
岩崎 有作 自治医科大学, 医学部, 講師 (60528420)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | インスリン / 求心性迷走神経 / GLP-1 |
研究実績の概要 |
求心性迷走神経は末梢と脳とを繋ぐ内臓感覚神経の一つであり、末梢情報を脳に伝達する重要な経路である。これまでに申請者は、食後に分泌促進されるインスリンが求心性迷走神経を直接活性化することを見出した。これは、食事情報を脳へ伝達するための重要な現象であると推察されるが、実際のインスリンの求心性迷走神経を介した脳作用について不明な点が多い。本研究では、インスリンの求心性迷走神経を介した脳機能、特に摂食行動に注目して解析をした。 Glucagon like peptide-1 (GLP-1)は、管腔内の食事刺激により腸管内分泌細胞から分泌される消化管ホルモンの1つである。食後、血中のインスリンとGLP-1は同時に上昇することから、インスリンの迷走神経活性化作用に対してGLP-1が協働的に作用するか検討した。マウスより単離した単一求心性迷走神経(Nodose ganglionニューロン、NGニューロン)の細胞内Ca2+濃度を測定することにより神経活性化を評価した。インスリン(100 nM:最大活性濃度)またはGLP-1(10 nM:最大活性濃度)の投与は、それぞれ約10%のNGニューロンの細胞内Ca2+濃度を上昇させた。さらに、インスリンに応答するNGニューロンの72%がGLP-1にも応答した。NGニューロンに対する活性化作用が弱い低濃度のインスリン(1 nM)とGLP-1(1 nM)を同時にNGニューロンへ投与すると、NGニューロンの細胞内Ca2+濃度を相加・相乗的に上昇させた。以上より、GLP-1がインスリンの迷走神経活性化作用を増強することを明らかとし、食後の満腹感誘導や糖代謝亢進作用への関連が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ウイルスベクターを用いた求心性迷走神経特異的なインスリン受容体もしくはシグナル分子ノックダウンの実験が遅れている。外科的手術を含めた手法の開発に時間を要している。 他方、インスリンによって活性化される求心性迷走神経はGLP-1によっても活性化することを見出した。GLP-1によるインスリン応答求心性迷走神経の活性化を介した摂食抑制・糖代謝亢進作用の研究を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
Nodose ganglionへのウイルスベクターのマイクロインジェクション法を確立する。迷走神経に発現するPhox2bのCreマウスとインスリン受容体 floxマウスを交配させ、迷走神経特異的なインスリン受容体ノックダウンマウスを作成し、解析をする。インスリン応答求心性迷走神経を活性化できる別の刺激剤(GLP-1など)を利用して、脳機能や活性化領域を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していた実験(迷走神経特異的インスリン受容体ノックダウン)に遅れが生じているため。
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次年度使用額の使用計画 |
ウイルスベクター、または、Cre-logPシステムによる求心性迷走神経特異的インスリン受容体 or インスリンシグナリング分子ノックダウン動物の作成とその脳機能解析を実施予定。同時に、インスリン応答迷走神経を活性化させるGLP-1もしくはGLP-1分泌促進剤を用いて、脳機能解析を実施予定。
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