研究課題
「致死性不整脈再現系の確立と不整脈の発生機序解明」という長期研究計画の出発点として、心筋リアノジン受容体RyR2のcDNAから作製したリコンビナントの催不整脈変異体蛋白分子を培養細胞に発現させたIn vitroの不整脈再現系を確立させる事に着手した。確立出来た再現系における不整脈発生機序を探って得られた成果のの概要を以下に述べる。RyR2は約5000個ものアミノ酸から構成されるが、遺伝子変異によりアミノ酸が1個でも置換されるとCa2+リーク能が異常に増大しヒトでは致死性不整脈である心室頻拍を起こしうる。そこで我々は、未だ良く判っていない点変異によるRyR2のCa2+リーク能亢進の分子機構に着目した。具体的には、心室頻拍患者の点変異体K4750QをIn vitro再構成し、変異体の単一チャネル電流特性とCa2+動態を調べた。初めてのRyR2変異体のチャネル開閉状態モデル化にも成功し、変異がRyR2を開状態に大きくシフトさせCa2+駄々漏れ状態となることを明らかにした。細胞質側Ca2+による活性化、同Ca2+による不活性化、小胞体内腔側Ca2+による活性化から成るRyR2の複数のCa2+感受性機構は、点変異により全てCa2+リーク能を劇的に高める方向に変化していた。このことは、3つのCa2+リガンド結合部位群からのCa2+結合に伴う構造変化の情報がK4750を含む箇所で収斂される部位に変異が入ることで説明される。RyR2発現細胞の小胞体内腔Ca2+濃度を小胞体標的Ca2+センサーCEPIAにより定量測定し、変異RyR2のCa2+リーク亢進による小胞体のCa2+枯渇(300から100μMへ減少)も明らかにした。この枯渇は安静時に心臓発作が起きないことを説明する。RyRを異所性発現したHEK293と心筋細胞由来のHL-1の両細胞で不整脈波のCa2+波が再現されることも確認した。
すべて 2017
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J Gen Physiol
巻: 149 ページ: 199-218
org10.1085/jgp201611624