研究課題
本研究の目的は、がん細胞のネクローシス(腫瘍壊死)とアポトーシスを制御する因子を特定し、その腫瘍生物学的な意義を明らかにすることで、がん分子標的として応用可能な因子を見出す事である。平成27年度は、以下の研究成果を得た。(1)ショットガンプロテオミクス手法を用いて、細胞死モデル細胞(マウス乳がんFM3A細胞F28-7株及びF28-7-A株)のネクローシスを起している細胞とアポトーシスを起している細胞において、それぞれ細胞外に漏出するタンパク質を網羅的に解析した。本研究から、ネクローシス細胞とアポトーシス細胞の漏出タンパク質の特徴を明らかにした。また、アポトーシス細胞でのみ特異的に細胞外に漏出するタンパク質を見出した。(2)これまでの研究から見出している細胞死制御因子(lamin-B1, cytokeratin-19, ATF3)、細胞死制御microRNAsについてsiRNA, miRNA mimic, miRNA inhibitorを用いて各種ヒトがん細胞に対する抗がん効果を評価し、抗がん標的として応用可能か検討した。また、各種公共データベースを用いて、がん治療標的としての有効性を検討し、低分子化合物、核酸医薬などの阻害剤を探索した。(3)3次元培養条件下の各種ヒトがん細胞株を用いて、これまでの研究から見出している細胞死制御因子(lamin-B1, cytokeratin-19, ATF3)、細胞死制御microRNAsについて、抗がん効果を評価した。また、これら因子の腫瘍生物学的な役割についても解析を行ない、がん分子標的として創薬展開の可能性を検討した。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度に計画していた研究を順調に実施しており、現在までに以下の研究成果が得られている。(1)平成26年度に得られた研究成果を基にして、平成27年度はショットガンプロテオミクス手法を用いて、ネクローシス細胞とアポトーシス細胞において、細胞外に漏出するタンパク質を詳細に解析した。本研究から、ネクローシス細胞とアポトーシス細胞の漏出タンパク質の特徴を明らかにした。また、アポトーシス細胞で特異的に細胞外に漏出されるタンパク質を見出した。(2)これまでの研究から見出している細胞死制御因子と細胞死制御microRNAsとの関連性を検討し、microRNAによる細胞死制御機構の一端を明らかにした。また、細胞死制御因子、細胞死制御microRNAについて、各種公共データベースを活用して、がん治療標的としての応用の可能性を検討し、阻害化合物の検索を行なった。(3)3次元培養条件下の各種ヒトがん細胞株を用いて、細胞死制御因子、細胞死制御microRNAsについて、その腫瘍増殖抑制効果を評価した。
平成26年度、27年度の研究成果を基にして、がん細胞のネクローシスとアポトーシスを制御する因子を標的としたがん治療戦略の有効性を明らかにする。また、細胞死関連漏出タンパク質について、ネクローシスとアポトーシスの細胞死マーカーとしての応用の可能性を検討する。今後の研究の推進方策としては以下の研究を計画している。(1)ネクローシス細胞またはアポトーシス細胞において、細胞外に漏出するタンパク質について、腫瘍生物学的な意義について詳細に検討する。また、種々の刺激によりネクローシスまたはアポトーシスを起している各種ヒトがん細胞を用いて、本研究から見出している細胞死関連漏出タンパク質がネクローシスとアポトーシスの細胞死マーカーとして応用可能か評価する。(2)細胞死モデル細胞を用いて、ネクローシスとアポトーシスの細胞死制御における細胞死関連漏出タンパク質の役割を詳細に解析する。(3)これまでの研究から抗がん標的として選抜した因子について、腫瘍モデルマウスにおいてその抗腫瘍効果を評価し、ネクローシスとアポトーシスの制御因子を標的とするがん治療戦略の有効性を明らかにする。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (22件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
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