研究課題/領域番号 |
26460313
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
仲村 朋子(吉川朋子) 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (30451397)
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研究分担者 |
仲村 厚志 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (50361829)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 概日時計 / 視交叉上核 / 発達 / Clock変異 / 発光レポーター / 光環境 / マウス |
研究実績の概要 |
生活サイクルの乱れから生じる概日リズム障害は、精神疾患や生活習慣病へとつながり、大きな社会問題となっている。幼少期の生活サイクルの乱れは、子供が後に概日リズム障害、さらには発達障害や精神疾患を発症するリスクを増大させている可能性が高い。本研究では、マウスを用いた実験により、概日リズムを正しく保つ環境を維持することの重要性を示す。 マウスは本来、夜行性である。明:暗=12時間:12時間の光周期下では、野生型マウスは、暗期の開始とともに活動を開始し、暗期の終了とともに活動を終了する。すなわち、ヒトに例えれば、早起き型の活動リズムを示す。一方、時計遺伝子Clockの19番目のエクソンを欠損したClock変異マウスの活動を測定したところ、活動の開始・終了ともに、野生型のマウスよりも有意に遅く、Clock変異マウスは、ヒトの夜ふかし型に相当する活動リズムを示した。また、Clock変異マウスは、休息期である明期の活動量が野生型に比べて有意に上昇しており、昼夜のメリハリのない活動リズムであることも明らかになった。 野生型マウスを早起き型、Clock変異マウスを夜ふかし型と位置付けて、中枢および末梢概日時計の解析を行うために、ルシフェラーゼ発光レポーター(Per1-luc TG、PER2::LUC KI)を持つClock変異マウスを作製した。これらのマウスより中枢時計である視交叉上核に加え、精神疾患との関わりが示唆されているドパミン神経を含む脳内の他部位のスライスを作製した。培養条件下において発光リズムを測定したところ、全体として野生型に比べて発光量が低いことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ルシフェラーゼ発光レポーター(Per1-luc TG、PER2::LUC KI)を持つ遺伝子改変マウスとClock変異マウスを交配し、発光レポーターを持つClock変異マウスを作製するのに、予想以上に時間がかかった。培養組織において、発光リズムを解析したところ、発光レベルの高い視交叉上核では、問題なくリズムの解析ができた。しかし、それ以外の脳部位では、十分な発光が得られないことが判明した。そこで、急遽、ルシフェラーゼ発光レポーターの中でも、よりも発光量が高いBmal1-ELuc TGマウスをClock変異マウスと交配し、別の発光レポーターを持つClock変異マウスを作製することにした。なかなか実験に使えるレベルにまでマウスが増えないので、発光リズム解析が進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
Clock変異マウスの概日時計の周期は、約28時間であり、野生型よりも有意に長い。この周期に合わせて、光周期を明:暗=14時間:14時間としてマウスを飼育したとき、Clock変異マウスの夜更かし型の行動リズムパターンが解消されるのかどうかを調べる。またその時、中枢あるいは末梢の概日時計がどのような挙動を示すのか、発光リズムの解析により明らかにする。 明:暗=14時間:14時間の光周期への移行は、成体になってからと出生直後からの2つのタイミングで行い、発達期における適切な光環境の重要性を示すことを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に使用するため、変異体マウスと遺伝子改変マウスを交配した。実験に供するためのライン化に予想以上に時間がかかった上に、発光レポーターの発光値が十分でないことが判明した。そのため、別の発光レポーターマウスを変異体マウスと交配し、新たなマウスラインを作製することになった。思ったようには、交配が進まず、実験に供するためのライン化がまだできていない。そのため、当初予定していた通りには、発光リズム解析が進められなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
実験動物が揃い次第、発光リズム解析を進める。動物飼育費、および発光リズム解析に必要な試薬代金として、次年度で使用する。
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