研究課題
1)14日齢~17日齢のマウス胎仔脳へ緑色蛍光タンパク(GFP)、赤色蛍光タンパク(RFP)遺伝子を異なる時期に子宮内電気穿孔法で導入し、大脳皮質前頭前野の細胞を蛍光顕微鏡下で可視化した。これにより、脳室帯から大脳皮質細胞が発生した時期を特定できることを確認した。2)次に同様の方法で、青色光により作動するチャネルロドプシンタンパクを発現する遺伝子を導入し、生後7日齢のマウスの脳スライスを作製、青色光により活動電位が発生することをパッチクランプ法により確認した。今後この手法で作製したマウスを用いて、光駆動による行動実験を行う事ができる。3)申請者がこれまでトニックGABA伝達に異常があることを確認しているPRIP1-KOマウスの扁桃体を採取し、野生型とGABA受容体サブユニット発現を比較した。通常のウエスタンブロッティング法では神経細胞全体のGABA受容体発現しか測定することができない。申請者がこれまで確認したトニック伝達はシナプス周囲のGABA受容体による可能性が高い。そこで、シナプス周囲(エクストラシナプティック領域)に存在する受容体とシナプス部分に存在する受容体、細胞質内に存在する受容体のタンパク発現の差をみるため、標本を超遠心で処理し、シナプス部、シナプス周囲、細胞質の3種類に分画したものをウエスタンブロッティングする方法を確立させた。雄マウスではPRIP1-KO、野生型との間に差は見られなかったが、今後雌雄差解析にこの手法を用いる予定である。
2: おおむね順調に進展している
1)マウス胎仔脳前頭前野へのGFP遺伝子子宮内電気穿孔法での導入。2)マウス胎仔脳へのGFP遺伝子導入により可視化した移動細胞の[Cl-]i、トニックカレント測定(胎生期、出生直後の性差):これまでに申請者らが確立した、大脳皮質錐体細胞でのGABA作動性トニックカレント研究の手法を生かし、まずマウスの子宮内胎仔脳室帯の神経前駆細胞に、電気穿孔法によりGFP遺伝子を繋いだプラスミドを導入し移動中の細胞に特異的にGFPを発現させ移動細胞を可視化する。数日後に仔ラットの脳スライス標本を作成して、移動中の前頭前野の皮質板細胞(GFP positive)を蛍光顕微鏡下で確認し[Cl-]iと細胞周囲のGABAによるトニックシグナルをグラミシジン穿孔パッチクランプ法で測定して移動状態と[Cl-]i、トニックシグナルとの相関を雌雄で比較し解析する。3)周生期、シナプス形成期脳の雌雄差解析1)2)はおおむね計画通り遂行した。3)に関してはシナプス形成期後の解析を先行して行っている。このほか、今後の解析に有用である細胞をシナプス部、シナプス周囲、細胞質に分画する手法を確立させた。
前年度に引き続き、周生期及び成長期マウス脳の雌雄差解析を行う。次年度は特に行動解析を中心に不安、抑うつの雌雄差解析およびそれに対する性ホルモンの関与を解析する予定である。課題は、周生期の性差の判別方法である。
26年度は既存の機器を用いた電気穿孔法およびパッチクランプ法の実験を主に行ったため備品の購入はしなかった。また、消耗品も既存のものを優先して使用した。
27年度は混合ガス作成装置、イメージング用フィルタ切り替え装置を備品として購入予定である。
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