研究課題/領域番号 |
26460316
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
澤井 信彦 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70307916)
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研究分担者 |
松崎 利行 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30334113)
飯島 典生 日本医科大学, 医学部, 准教授 (00285248)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン / キスペプチン / ニューロキニンB / 室傍核 |
研究実績の概要 |
視床下部におけるキスペプチン免疫陽性神経線維の分布は、弓状核から第三脳室周囲領域、室傍核へと連なっており、室傍核への投射と共にその尾側にある第三脳室周囲領域へのキスペプチン投射の性質を比較する必要がある。このため、その領域にあるプロラクチン分泌調節性ドーパミンニューロンの亜集団であるPHDAへのキスペプチンの関与を調べた。PHDA neuronの細胞体にキスペプチン陽性線維は接着し、それはニューロキニンB 陽性でもあることから、弓状核のTIDA neuron同様に主に kisspeptin/neurokinin Bニューロンの入力を受けることが確認された。さらに、TIDA PHDAともにニューロキニンB 受容体、neurokinin type 3 receptorを発現していることを免疫組織学的に示して報告した(Neuroscience Research, 2014)。また、2014年にオーストラリア・シドニーで開催された国際学会(International Congress of Neuroendocrinology )においても学会発表した。一方では、蛍光標識キスペプチンペプチドを用いて、脳室内投与によるin vivo binding assayを行い、細胞選択性をもった標識を確認した。TRHに対する抗体との二重標識により、室傍核において蛍光標識キスペプチンが結合する対象として多くはTRH陽性細胞であることを現在、示しつつある。さらに、結合した細胞におけるcFOS反応も増加傾向が見られ、併せて計測中である。以上のように、神経線維連絡と受容体発現、結合特異性の両面から経路の存在を明らかにしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定されていた室傍核TRHニューロンへのキスペプチン結合能の検証だけでなく、隣接する領域への投射系についても区分けを行ったため、やや内容が膨らんだが、おおむね手法的には順調に成果を出せている。その一部はすでに論文発表や学会発表を行った。当初H26年度に予定したサポリン毒素結合ペプチドの作成に至らなかったのは、研究順序を再考したためで、キスペプチン結合能を確認した次には、具体的な受容体の同定をmRNAレベルで解析することを優先課題とし、そのために必要な試薬をすでに購入した。
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今後の研究の推進方策 |
キスペプチン結合に関するデータの統計に必要な蓄積を推進するとともに、室傍核に発現するキスペプチンに親和性をもった受容体の同定と、その発現細胞を同定することを最優先目的とする。このためにレーザーマイクロダイセクション法を用いたシングルセルのmRNA解析を進める。その後、計画通りに、キスペプチン投射系の阻害や亢進による、受容体分子やTRHの発現量変化と、血中ホルモン濃度、体温調節の関連性について検証する実験系を推進する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
脳定位装置およびマイクロインジェクターを想定していた金額よりも廉価で購入する事ができた。また、当初H26年度に業者委託で作成するはずであったサポリン毒素結合ペプチドを研究順序の再考のため当年度には購入しなかったため、40万円相当の金額が持ち越しになった。その代わりに、ペプチドや受容体のmRNAの発現解析、定量実験のために必要な消耗品全般を優先して購入した。
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度には、確立された手法を用いて進めるために、ひきつづき試薬および実験動物を必要とする。またシングルセルの解析のためにレーザーマイクロダイセクションに必要な消耗品を購入する。結果をもって、キスペプチンに結合能のあるニューロンの選択的破壊もしくはsiRNAを用いた受容体発現抑制を検討し、それに必要な試薬の購入に今後は使用する予定である。
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