研究課題
CIN85欠損マウスの育仔放棄の発現メカニズムの解析:育仔放棄するCIN85 KO母親の出産時における脳内ドパミン濃度は、正常値に比べて著しく高く、逆に血中プロラクチン (PRL) 濃度は低かった。この母親から産まれたメスは成熟後、妊娠・分娩するが、育仔放棄した。育仔放棄する母親の妊娠期にPRLを投与すると、そこから産まれたメスは成熟後、妊娠・分娩し、仔育てするようになった。放射性PRLの投与実験により投与したPRLの1.8%が胎盤を通過して胎仔脳に移行していることがわかった。これらの結果より「子育てをするか?しないか?」は胎児期の脳外内分泌環境、特にドパミンとPRLが決定的な役割を担うことを示す。CIN85異常によるヒト多動症及びX染色体連鎖性精神遅滞の遺伝子解析と診断法の確立:CIN85がX染色体にリンクした精神疾患の発症メカニズムに深く関与していることを明らかにするためにドイツ ゲッチンゲン大学のShoukier博士から提供された多動症及びX染色体連鎖性精神遅滞家系の患者のゲノムDNAからCIN85遺伝子領域約360.7 kbpの塩基配列を解読し、正常者の配列と比較・検討した。その結果、複数の男性患者の13番エクソンに31塩基の欠損を発見した。この欠損はアミノ酸翻訳のフレームを変化させ、他のタンパク質との結合に必要なProline-rich領域 (Pro-rich)のProline(プロリン)残基を消失させる。X染色体連鎖性精神遅滞(XLMR)の患者では、このProline-rich領域の機能消失が正常な脳機能、例えば他の分子との結合など、における細胞内情報伝達機構を撹乱し精神遅滞を発症させると考えられる。この結果は、本症の発症メカニズムを理解するうえで極めて重要な知見である。
3: やや遅れている
複数のヒト多動症及びX染色体連鎖性精神遅滞家系の患者のゲノムDNAからCIN85遺伝子領域約360.7 kbpの塩基配列を解読に予想以上の時間がかかっている。
若干遅れているヒト多動症及びX染色体連鎖性精神遅滞家系の患者のゲノムDNAの解析と並行して、CIN85欠損による育児放棄のメカニズムの解析を行っている。この解析は当初の予定通り進んでおりゴール(論文投稿)まであとわずかである。こちらに集中することで本研究全体の推進を図りたい。
消費税の引き上げによる誤差として1円が生じた。
差額はわずか1円なので、提出した研究計画通り使用する。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Journal of Neuroendocrinology
巻: 26 ページ: 164-75
10.1111/jne.12135.
Physiological Reports
巻: 2 ページ: 1-10
10.1002/phy2.197.
Eoropean Journal of Neuroscience
巻: 40 ページ: 3627-34
10.1111/ejn.12728.