研究課題/領域番号 |
26460318
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
上條 義一郎 和歌山県立医科大学, みらい医療推進センター, 准教授 (40372510)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 皮膚交感神経活動 / 心周期同期成分 / 頸髄損傷者 / 暑熱馴化 / 血漿量 / 心房圧 |
研究実績の概要 |
熱中症は暑熱環境に身体が適応できないために生ずるため、その予防には、いかに暑熱馴化できるかが重要である。健常なヒトが暑熱暴露を受けるとき、熱放散を促すために皮膚血流が増加する。一方、暑熱馴化は血液量を増加させ心房を伸展させることで圧反射性に皮膚血管拡張反応を亢進させると考えられている。最近、申請者らはこの圧反射性皮膚血流調節の遠心路は皮膚交感神経活動(SSNA)に含まれる心周期同期成分(R波からの潜時は約1.1秒)であることを明らかにした。しかし、この成分が暑熱馴化後の皮膚血管拡張反応亢進に関与しているか否かについては不明である。また、高体温時における皮膚血管拡張反応がすべて交感神経活動で説明できるのか否かも不明である。 そこで我々は、1)「暑熱馴化による血液量増加は心房伸展を増強させることで運動時の体温上昇に対するSSNA心周期同期成分を亢進させ、その結果、皮膚血管拡張反応を亢進させる」という仮説を証明すること、2)交感神経活動が完全に障害されている頸髄損傷者(CSCI)において、暑熱負荷時の深部体温上昇における皮膚血管拡張反応を健常者と比較することを目的とした。 その結果、1)5日間の持久性トレーニング後、トレーニング前に比べて血漿量が約6%増加し、暑熱負荷時における深部体温上昇に対するSSNA心周期同期成分は約50%増加し、皮膚血管コンダクタンス(=皮膚血流量/平均動脈圧)の上昇も約30%増加した。また、2)暑熱負荷により深部体温を1℃上昇させたとき、健常者において皮膚血管コンダクタンスが胸部では約400%、下腹部では約200%上昇したが、CSCIでは全く見られなかった。 以上の結果は、暑熱負荷時における皮膚血管拡張反応はほぼ交感神経活動で説明でき、暑熱馴化によるこの反応の亢進には、SSNA心周期同期成分が関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
理由1: タングステン微小電極(FHC)を用いて皮膚交感神経活動(SSNA)を左橈骨神経から測定する手技の確立ができなかった。 理由2: ヒト高体温時の皮膚血管拡張反応にSSNA拡張神経活動が関与していることがこれまでの研究で示唆されている。ところが、この拡張反応がそもそもSSNAですべて説明できるのか否か、これまで検討されたことはなかった。今回、申請者は交感神経活動が完全に障害されている頸髄損傷者において、高体温時の皮膚血管拡張反応に関するデータを検討する機会を得た。暑熱馴化研究に優先されると判断された。
従って、健常者における暑熱馴化に関する計画の実施が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
皮膚交感神経活動(SSNA)・心周期同期成分が暑熱馴化後の皮膚血管拡張反応亢進に関与しているか否かについて検討するために、運動様式を上肢運動に切り替え、従来通り腓骨神経からの信号取得を確立する。 引き続き障害者において、高体温時の皮膚血管拡張反応を計測する。交感神経が障害された頸髄損傷者(CSCI)において、局所の温熱刺激に対する反応は健常者と比較して衰えているのか否か、胸・腰髄損傷者において、健常部位における皮膚血管拡張反応は健常者に比べて代償的に亢進していないかどうか、検証していく。 さらに、これら障害者において、受傷年数、体力レベルと皮膚血管拡張反応の間の関係を明らかにし、CSCI、SCIにおいても馴化があるのか否かも検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度において、血漿量、ヘモグロビン濃度測定に必須で使用するy鄭である分光光度計の購入ができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
上述、分光光度計を購入する。 さらに、国際学会も含め、すでに3学会での発表が確定しているため、この旅費に当てる。 また、論文投稿に時に必要な校正料、投稿料に当てる。
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