研究課題
暑熱馴化は血液量を増加させ高体温時における皮膚血管拡張・発汗反応を改善し熱中症を予防する。例えば、高齢男性が8週間の持久性トレーニング期間中、運動直後に蛋白質を摂取すると血漿量が6%増加し、血圧を悪化させることなく食道温(Tes;深部体温の指標)上昇に対する皮膚血管拡張反応が改善する(Kataoka et al. 2016)。一方、暑熱環境下・立位では皮膚血管拡張による末梢への血液貯留と発汗による脱水が心臓への静脈還流量を低下させ血圧維持を困難にする。このため心房を介して圧反射性に過剰な皮膚血管拡張を抑制し血圧を維持する。皮膚血管は皮膚交感神経支配を受け、その活動(SSNA)は原波形を整流・積分化して得られるバースト発生頻度(BFSSNA)で評価されてきたが、圧反射性皮膚血流調節への関与は不明であった。最近我々は、SSNAには心周期同期成分(UASSNA)が含まれ、この成分が同調節に関わることを示した(Kamijo et al. 2011; Ogawa & Kamijo et al. 2017)。すなわち暑熱馴化による血液量増加が同成分を亢進させている可能性がある。若年男性において5日間の持久性トレーニング前後で血漿量、暑熱負荷時の体温調節反応やSSNAを測定すると、介入前、暑熱負荷時の能動性皮膚血管拡張やUASSNA上昇開始時のTesはそれぞれ37.3℃、37.2℃で、発汗開始は36.9℃でBFSSNA上昇開始と一致した。介入後、血漿量が14%増加すると皮膚血管拡張やUASSNA上昇閾値は0.4℃、発汗開始やBFSSNA上昇閾値は0.2℃低体温側へ移動したが、血漿量が増加しないと、この改善を認めなかった。暑熱馴化における血液量増加はUASSNAを介して体温調節反応を改善する可能性がある。
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